「業務委託契約を結んでいるから
労災や会社の責任とは無縁。」
そう考えている経営者の方は少なくありません。
しかし
契約書のタイトルが「業務委託」でも
実際の働き方によっては「雇用契約」と
判断されることがありますので
注意が必要です。

(今日の「棒人間」 それって労災??)
<毎日更新1899日目>
都内で運送会社を営むA社長。
ある日
会社に内容証明郵便が届きました。
A社長が慌てて内容を確認すると
なんと
A社長の会社と業務委託契約を締結
しているドライバーのX氏が
A社長の会社に損害賠償を
請求するというものでした。
X氏は
A社長の会社と5年ほど前から業務委託契約を
結んでいるベテランの配送ドライバーでした。
ところが
X氏は業務中の荷下ろし作業中に
怪我をしたことをきっかけに
労災の申請をしようとしました。
しかし
X氏はあくまでA社長の会社と
業務委託契約を結んでいるに過ぎず
雇用関係にはないため
労災の枠組みから外れていたのです。
そこで
X氏は
自身はA社長の会社との間で
「実質的な雇用関係」にあったとして
A社長の会社に対して労災の損害賠償を
請求してきたのです。
ここで
労働契約法5条で
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
と規定しています。
これは
いわゆる会社の社員に対する
安全配慮義務を定めた規定です。
すなわち
会社は雇用する社員の職場環境を整備し
その生命・身体等の安全を確保するべく
配慮しなければならない。
会社がその義務に違反して
社員が生命・身体等の損害を被った場合
いわゆる労働災害として会社は
損害賠償責任が発生します。
しかし
この労働契約法5条は
あくまで雇用契約について
適用される条文です。
逆に言えば
会社と業務委託契約を結んでいた場合
当然にはこの条文は適用されません。
そこで
法律上「業務委託契約」と「雇用契約」の
法律的な違いについて確認しておきましょう。
雇用契約とは
労働者が使用者(会社)との間で
労働に従事することを約束し
使用者がそれに対して賃金を
支払うことを約束する契約です。
他方で
業務委託契約とは
企業や組織が行っている業務の一部を
外部の企業や個人に委託する際に
結ぶ契約の総称のことです。
問題は
「雇用契約」なのか
「業務委託契約」なのかは
形式的な契約の名前や契約書の
名称で決まるわけではない
という点です。
あくまで
会社との関係や働き方の
実態を見て判断される
ということです。
両者の違いを大まかに言うと
働く人が
会社などの使用者に対して「従属」しているか否か
というのがポイントになってきます。
従属性が強ければ「雇用契約」
弱ければ「業務委託契約」
ということになります。
そして
雇用契約か
業務委託契約かは
具体的には
下記のような要素で判断されます。
| 比較項目 | 業務委託契約 | 雇用契約 |
|---|---|---|
| 基本的な立場関係 | 発注者に対して対等で自由な立場 | 事業主に対して従属的な立場 |
| 使用従属性 | 使用従属性が弱い | 使用従属性が強い |
| 仕事の依頼・指示に対する拒否権 | 断る自由がある | 断る自由がない(拒否しにくい) |
| 業務内容・仕事の仕方 | 自由度が高い | 依頼者が指揮命令権を持つ |
| 働く場所 | 自由に選択できる | 決まった場所で拘束される |
| 働く時間 | 自由に決められる | 決まった時間で拘束される |
| 報酬の基準 | 仕事の結果を基準 (成果報酬:1件いくら等) |
働いた時間を基準 (時給、月給等) |
運送会社のケースで言えば
配送ルートや訪問の順番
細かな配送手順まで会社が事細かに
指示しているということであれば
使用中属性が強く
雇用契約と判断されやすいでしょう。
また
「何時に出社して点呼を受けろ」
「この時間は必ず待機しろ」といった
場所と時間の拘束がある場合もやはり
雇用契約と判断されやすくなります。
さらに
会社からの配送依頼に対して
ドライバーが断るという選択肢を
持っていなければ
やはりこれも雇用契約に
傾く事情となります。
逆に
具体的な作業方法やルートの指定は控え
あくまで「いつまでに、何を、どこへ運ぶ」
という結果に対して報酬を支払うスタイル。
そうであれば
配送のやり方はプロのドライバーの
裁量に任せられるので
業務委託契約と
判断されやすいでしょう。
また
業務依頼は「命令」ではなく
あくまで依頼ベースとすべきでしょう。
そして
都合がつかない場合に拒否が
できる関係性を作ることも
業務委託としての独立性を
強める事実となります。
冒頭の事例でも
A社長の会社とX氏が実質的に
「雇用契約」と判断されれば
A社長の会社は安全配慮義務違反として
X氏に対する賠償責任を負う
可能性が出てきます。
実際
ドライバーと業務委託契約を締結
していた運送会社について
「雇用契約か
これに準じる契約だった」と
判断した裁判例もあります。
このように
雇用か業務委託かは
形式的な契約書の名称ではなく
働き方の実態を見て判断されるという
ことは覚えておかれた方が良いでしょう。
そして
このことは運送業には限りません。
社員を雇う代わりに業務委託契約を
使っているケースすべてに当てはまります。
一度
自社の現場での働き方を
見直してみることをお勧めします。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。