事業承継のために分散した
株式を集めようとしたところ
「株券が見つからない」という思わぬ問題が。
そんなとき
安易な対応をしてしまうと
せっかくの株式譲渡が無効になる
おそれもありますので
注意が必要です。

(今日の「棒人間」 それはやってはいけない禁じ手??)
<毎日更新1911日目>
昨日のブログでは
事業承継の前提として
会社の株式が分散してしまっている
問題について書きました。
株主が20人!? 中小企業の事業承継で、株が分散しているという問題
すなわち
事業承継で
後継者に会社の株を引き継がせようと思っても
株が経営者や後継者以外の多くの
株主に分散してしまっている。
創業から40年以上続くA社長の会社で
長男への事業承継を検討し始めたところ
なんとこの会社には「現在の株主が20名」
もいたことが発覚します。
株数を数えると
A社長の持ち株は約60%。
一応過半数は押さえているので
日常業務には支障はありませんが
定款変更など3分の2以上の多数を
必要とする株主総会の特別決議には
対応できません。
昨日のブログでは
中小企業で会社の株式が経営者や後継者以外の
第三者に分散している場合のリスクについて
お話ししました。
ですから
やはり株の分散を早めに解消する
手立てを打っておく必要があります。
具体的には
まず
経営者や後継者以外の株主で
連絡が取れている株主に対しては
個別に交渉をすることになります。
上記のA社長の会社では
上記の20名の株主のうち
約10%という比較的
多くの株を持っている
元社員のXさんがいました。
この人は
A社長の先代社長の時代の元社員で
もう会社を退職してから20年以上
が経過していました。
A社長は久しぶりにXさんに連絡が取れ
Xさんの持ち株を譲渡してもらえないかと
交渉を行いました。
Xさんは快く承諾してくれたものの
1つ問題がありました。
実は
A社長の会社は先代の時代から
株券を発行している会社なのですが
なんとXさんは
自分の持ち株について
株券をなくしてしまったと言うのです。
困り果てたA社長
それならば会社で再度X社長の株式を
事実上再発行してしまって
それを譲渡してもらったらどうだろう
という考えが頭をよぎりました。
果たして
こうした方法はどうなんでしょうか?
結論から言いますと
このように紛失した株券について
会社が勝手に再発行するというのは
絶対にやってはいけない「禁じ手」です。
そもそも会社法上は
株券を発行している会社では
株式の譲渡には株券の交付が
必要であると定められています。
なぜなら
仮にこの場合
X氏の株券を再発行して
それをA社長に譲渡して
もらったとしましょう。
その後X氏が亡くなり
X氏の相続人が
X氏の遺品の中から
なんとX氏の持ち株に相当する
株券を発見します。
相続人はもちろん
A社長の会社に連絡をとり
株券に基づいた権利行使を
することが考えられます。
そうなった場合
A社長の会社が勝手に行った
株券の再発行は無効であり
そうなると株式の譲渡自体が
無効となります。
つまり
株主は依然としてX氏の遺産を相続した
相続人であることになり
深刻なトラブルになってしまう
可能性があります。
それでは
上記のX氏のように
株主であることは間違いないものの
株券をなくしてしまった場合は
どうすれば良いのでしょうか?
こうした場合を想定して
会社法では、「株券喪失登録」の
手続きが用意されています。
具体的には
まず
株券を喪失した株主であるX氏が
会社に対して「株券喪失登録簿」への
記載等を請求することができます。
会社がそれに基づき
請求にかかる株券番号等の
株券喪失登録を行います。
そして
それから1年が経過した後は
株券喪失登録がなされた株券は
法的に無効となります。
そうしてはじめて
株券を喪失したX氏は
会社から自身の持ち株にかかる株券の
再発行を受けることができるのです。
そして
その再発行を受けた株券を
A社長に交付することで
X氏はその持ち株をA社長に
譲渡することが可能になります。
こうした手続きを踏んでおけば
万が一将来上記のようにX氏の
相続人が株券を発見しても
その株券はすでに法的に
無効になっています。
すなわち
正式に再発行して譲渡を受けた
株券が有効ということになるので
問題は生じないというわけです。
このように
回り道にはなりますが
やはり株券を喪失した場合は
安易な勝手な再発行をするのではなく
こうした「株券喪失登録」の
手続きを踏む必要があるのです。
ただし
今どき「株券」を発行している会社というのは
そもそもいろいろ面倒なリスクが
多いと言えるでしょう。
具体的には
まず上記のようは株券の紛失リスクがあります。
株券発行会社は
株式の譲渡に株券の交付が必要となりますので
紛失した場合に上記のようにスムーズな
株式譲渡に支障が出てしまいます。
また
それでなくても譲渡のたびに
株券の交付が必要となるので
その分事務手続きも面倒です。
そこで
そもそも株券を発行しない会社
すなわち株券不発行会社に切り替える
ことをお勧めします。
これにはまず
株主総会の特別決議を開いて定款を変更し
定款の中の「株券を発行する」
という定めを削除します。
その上で
既存の株主などに対して「公告」
と個別の通知を行います。
こうした一定の手続きを経て
株券不発行会社となり
すでに発行した株券が無効となります。
いずれにして
事業承継を円滑に進めるためには
分散した株式をできるだけ集める
というプロセスが必要になってきます。
株券を発行している会社であると
上記のようにこの株を集めるプロセスにも
支障が出る可能性があります。
こういった諸々のことを考えると
やはり事業承継というものは
早めに準備に着手するに
越したことはありません。
「うちは関係ない」などと考えずに
ぜひ早めの検討をお勧めします。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。