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渋谷の弁護士吉田悌一郎

会社の「支店長」が勝手に結んだ契約は有効か?

不動産賃貸

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社長が知らない間に、

信頼していた会社の支店長が

取引先と癒着(ゆちゃく)。

 

 

それによって会社が

損害を被るという

トラブルがあります。

 

 

支店長が社長の許可なく

勝手に結んだ契約って、

果たして有効なのでしょうか?

 

(今日の「棒人間」 悪徳支店長??)

 

<毎日更新1010日目>

古参の支店長が勝手に契約??

先日、

不動産賃貸管理業を営む

X社のA社長から

ご相談を受けました。

 

 

X社は都内で複数の

不動産を所有し、

それを賃貸しています。

 

 

このX社には、

勤続40年になるベテランの

社員Cがいて、

現在は「支店長」の

肩書を持っています。

 

 

実は、

このCは、

もともとA社長の信頼が厚く、

A社長は支店長であるCに、

不動産の賃貸業務を

大幅に任せていました。

 

 

ただし、

賃貸物件について契約を

締結する権限までは

与えておらず、

契約内容を勝手に変える

権限も与えて

いませんでした。

 

 

ところが、

先日とんでもない事実が

発覚したそうです。

今日は、おりいってご相談したいことがありまして。

会話

A社長、今日は難しい顔をされて、いったいどうしたのですか?

うちの会社が長年ビル 一棟を賃貸している借主がいるのです。

会話

なるほど、ビル一棟の賃貸ですね。

ところが、約10年前の契約更新時期に、賃料がそれまでよりも10%も下げる契約が結ばれていたのです。

会話

賃料10%も減額ですか。

そうなんですよ、あれは駅近の優良物件ですし、昨今の地価上昇を考えたら、10%も賃料を値下げするなんてあり得ません。

会話

しかし、借主さんとの間で、どうしてそんな契約を結んだのですか?

それが、支店長のCが、私の承諾もなく勝手に賃料を10%も下げて契約していたのです。

会話

Cさんは、なぜそんな契約をしたのですかね?

私がCを問い詰めてみたところ、どうもその借主とCが癒着していたようで、Cはこの借主から多額のリベートを受け取っていたそうなんです。

会話

そういうことだったのですね。

Cのことを信頼していただけに、裏切られた気持ちでいっぱいです。

会話

それはそうでしょうね。お察しします。

それはそれとして、借主との間の賃料の問題です。私としてはそんな安い値段で貸すつもりはありませんし、契約はCが勝手にやったことですので、契約は無効ではないですか?

会話

難しいところですが、Cさんは「支店長」という肩書きがありますので、法律によって適法な会社の代理権がある人、とみなされる可能性があります。

やはりそうですか。うちとしてはエラい損失ですよ!

会話

ただ、Cさんは借主から多額のリベートをもらうなど、癒着していたということでしたね。

そうなんですよ、本当に腹立たしい限りです!

会話

もしこの借主が、Cさんには家賃を減額して契約する権限などないことを知っていた場合は、契約は無効とされる余地はあります。

そうなんですか。

会話

そのような場合は、借主を保護する必要はないですからね。ただ、借主がCに権限がないことを知っていたことは、こちらで証明しなければなりません。それはなかなか難しい場合も多いでしょうね。

 

社長の代わりに契約をする権限のある社員とは?

そもそも「契約」というものは、

原則として当事者間の意思が

合致することによって

成立します。

 

 

単純に、

ある物の売買契約であれば、

売主の「その物を売りましょう」

という意思表示と、

買主の「その物を買いましょう」

という意思表示が合致することで、

法律上契約が成立するわけです。

 

 

この点、

会社というのは、

「法人」ですから、

「意思表示」というものが

観念しづらいとも思えます。

 

 

ただ、

法律上は、

会社のような法人には人格が

あるものとみなされます。

 

 

そして、

会社の代表権を持っている人が、

会社の代表者として会社の

意思表示を行っている

ことになるわけです。

 

 

代表権のある人が行った契約は、

会社自身に法的効果が及ぶ

ことになりますので、

会社の代表者がした契約は、

会社が結んだ契約として

効力を生じます。

 

 

会社の代表権があるのは、

通常は社長、

すなわち代表取締役とか、

代表権のある取締役の地位に

ある人のことを指します。

 

 

ただ、

会社の規模によっては、

社長がいつもすべての契約締結に

直接関わらなければならない、

というのは不便だったりします。

 

 

そこで、

会社の代表者が、

特定の取引とか契約を結ぶ権限を、

社員に委任する(任せる)

ことがあります。

 

 

もし、

こういった権限を

与えられていない社員が、

会社の代表者の許可を受けずに、

勝手に他社と契約を締結した場合、

会社の契約としては、

原則として無効となります。

 

 

上記のX社の事例でも、

Cは「支店長」という

肩書きはあるものの、

 

 

新たに賃貸契約を結んだり、

契約内容を変更したりする

権限をA社長は

与えていなかった。

 

 

ですから、

やはりCが勝手に行った、

賃料を10%も減額する契約も

無効であるように思われます。

 

 

 

社員が勝手に契約しても有効になる場合

ところが、

その社員が、

その契約を結ぶ権限を

与えられているかどうかは、

その会社の内部事情であって、

外部の取引先には

わかりません。

 

 

特に、

「支店長」とか

「営業部長」といった、

社内で一定の権限

があるだろうと推測

されるような肩書を

持った社員が

契約をした場合、

 

 

通常取引相手としては、

そうした肩書を信用して

契約をするのが通常です。

 

 

それにもかかわらず、

後になって、

いやいや、あれはうちの社員が許可を受けずに勝手にやったこと。
うちの会社は知りません。

なんてことを言われてしまうと、

およそ安心して取引をする

ことができなくなります。

 

 

そこで、

会社法13条という法律で、

会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

と定められています。

 

 

わかりにくい法律の条文ですが、

まず「使用人」というのは、

社員とか従業員のことと

考えていただいて構いません。

 

 

「会社の本店又は支店の事業の

主任者であることを示す名称」

というのは、

まさに「支店長」とか、

「営業所長」のように、

外部から見て一定の権限が

ありそうな肩書のことを指します。

 

 

「一切の裁判外の行為を

する権限を有するものとみなす」

というのは、

要するに、

 

 

もし実際には権限が

なかったとしても、

その取引や契約を結ぶ権限が

あったものと法律上みなす、

ということです。

 

 

「みなす」というのは法律用語で、

実際には違っていても、

法律上はそのように扱いますよ、

という意味です。

 

 

また、

「相手方が悪意であったときは」

これもわかりにくいですね。

 

 

「悪意」というのは、

「知っていた」ということを

意味する法律用語です。

 

 

悪気があるとか、

悪い人といった意味は

一切ありませんので、

注意が必要です。

 

 

ただ例外的に、

もし取引相手が、

その契約をした人に

権限がないことを

知っていた(悪意だった)場合には、

権限があったとはみなさないよ、

 

 

つまり、

契約は原則に戻って無効だよ

と言っているのが後段です。

 

 

この点、

上記のX社の例で、

Cが借主と癒着しており、

借主が、

 

 

Cが賃料を減額する権限が

なかったことを知って

いた場合には、

そうした減額の契約は

無効となります。

 

 

ただ、この場合でも、

Cに権限がないことを

借主が知っていた、

ということをX社の側で

証明しなければなりません。

 

 

「知ってる」とか「知らない」

といった他人の内心の意思を

証明するのは、

一般的には大変です。

 

 

いずれにしても、

実際の取引社会においては、

やはり権限のない社員が

会社の決済を得ずに勝手に

契約をしてトラブルになる、

という事例が時々あります。

 

 

上記のX社の事例で、

A社長に反省点があるとすれば、

やはりこの借主との間の

賃貸借の実務をすべて

Cに任せきりにしていた

ことでしょう。

 

 

だいたい、

会社で社員の横領とか、

取引先との癒着というのは、

1人の社員に任せきりに

していることが原因で

発生することが多いのです。

 

 

リソースが限られている

中小零細企業では、

より一層そうした傾向が

あります。

 

 

しかし、

会社の重要な業務を

1人の社員に任せきりに

することは、

様々なリスクを伴います。

 

 

大変ではありますが、

複数の社員がチェック

できる態勢にするとか、

社長が定期的に抜き打ちで

チェックを入れるなど、

なんらかの工夫は

必要でしょうね。

 

 

それにしても、

長年信頼していた

社員の裏切にあうのは、

社長としては大変に

辛いことですね。

 

 

そうならないための、

社内の仕組みづくりが

大切だと思います。

 

 

それでは、

また。

 

 

 

 

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最新動画 

今回は、「借主が無許可で看板設置、こんなテナント出て行って!と言えるか?」というテーマでお話ししています。

 

 

 

 

 

活動ダイジェスト

昨日は、早朝から渋谷区倫理法人会の経営者モーニングセミナーに参加。
その後は事務所で仕事。
午後は裁判所へ。長年懸案だった案件がなんとか解決に向かいました。
その後は自宅へ戻って、息子の習い事(英会話)の送迎や、新規のお客様との打ち合わせ(オンライン)などでした。

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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