元請け事業者から
「オタクの会社の倉庫にうちの
部品を置かせて」と言われた。
長期間
大量の部品が自社の倉庫の置かれていて
棚卸しまで求められる。
こんなとき
どうしたらよいのでしょうか?
(今日の「棒人間」 横暴な要求に「N0」と言えるか??)
<毎日更新1064日目>
半導体の製造などを行うA社。
この会社では
元請けであるB社から仕事の受注を受けて
半導体を製造しています。
A社の社長の最近の悩みは
B社の担当者から
オタクの社内にあるあそこの倉庫、あいてたら、ちょっとうちの部品置かしてよ。
そのうちオタクに仕事発注するときに、その部品使ってもらうから。
と言われ
大量のB社の部品がA社の
倉庫に納入されました。
ところが
最近ではB社からの受注も減ってきて
B社の部品は相変わらず大量に
A社の倉庫に置かれたまま。
さらに
B社の担当者からは、
悪いんだけどさぁ、オタクに置いているうちの部品の棚卸しもやってもらえないかな?
と言われて
年に2回
A社の倉庫に置かれた大量のB社の
部品の在庫管理や棚卸しを
やらされているとのことです。
A社としては
自社の倉庫であるにも関わらず
B社の部品が大量に置いて
あるので使えません。
しかも
B社の部品の在庫管理や棚卸しの
負担もバカになりません。
なんとかならないのでしょうか?
これは
A社もB社も
いわば会社同士での
取引になるわけです。
商人同士の取引ルールの
概要を定めた「商法」
という法律があります。
その商法の512条
というところで、
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
と定められています。
会社は
ここでいう「商人」にあたると
考えていただいて構いません。
商人
すなわち会社というものは
お互いに利益を出すということを
目的とした組織です。
ですから
会社が自社の営業の範囲内で
他社の利益になる行為をしたときは
特に約束がなくても「報酬」
を請求することができる
と定められているのが
この商法512条なわけです。
この点
上記のA社は
自社の中にある倉庫に
B社の部品を保管させている。
いわば
他社の利益になる行為
をしているわけです。
そこで
本来であれば
A社はB社に対して
特に「報酬」の約束をしていなくても
相当な「保管料」を請求
することができるわけです。
とはいえ
A社の社長から言わせれば、
法律の理屈はわかりますが、保管料なんか請求したら、今後B社との取引を打ち切られたり、いろいろと嫌がらせをされてしまいます。
という心配があるでしょう。
元請けであるB社から仕事を
受注しているA社の社長としては
もっともなご心配だと思います。
実は
下請法という法律が
こうした元請け事業者の
行為を規制しています。
すなわち
下請法4条2項の3号では
自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
によって
下請け事業者の利益を不当に
害することを禁止しています。
ここで「経済上の利益」とは
金銭や役務を提供させる
ことが代表例ではありますが
それ以外にも経済上の利益
といえれば一切のものが
含まれるとされています。
保管料を支払わずに
下請業社に自社の部品を保管させていた
ということになれば
やはりこの「経済上の利益」
を提供させたことになります。
それでは
元請け事業者が
このように下請法の規制に違反した場合は
どうなるのでしょうか?
この点
公正取引委員会は
もし元請けや親事業者が
下請法に違反した場合には
そうした違反行為をやめるように
「勧告」を出すことができます。
さらに
公正取引委員会は
必要があると認めた場合には
元請事業者に対して報告を求めたり
事業所への立入検査なども
行えることになっています。
そして
その際に元請事業者が
ウソの報告をしたり
検査を拒否したような場合には
50万円以下の罰金という
罰則も定められています。
その上
公正取引委員会では
毎年違反事業者の勧告事例を
公表しています。
そんなわけで
最近では大企業などを中心に
「下請法違反」については神経を
尖らせている面があります。
もしも
元請け事業者から、
オタクの倉庫にうちの会社の部品を置かせて
などと言われたら、
う〜ん、それは、下請法の規制に違反しないでしょうか?
と言ってみましょう。
ちなみに
いつもこのブログでも言っているように
交渉ごとではなんでも「証拠」を
残すことを意識して下さい。
元請け事業者とのメールのやり取りなども
後で重要な証拠となります。
元請け事業者からの無理な要求などには
下請法などを使って上手に
交渉したいものです。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。