「会社の金は、オレの金」
中小零細企業の社長の中には
公私混同し
会社を私物化してしまう人がいます。
こうした社長に対して
少数株主がなにか対抗する
方法はないのでしょうか?
(今日の「棒人間」 「対抗手段」を持つ人?)
<毎日更新1214日目>
Aさんは
叔父さんであるB氏が経営する
Y株式会社の株式を20%ほど
保有している株主です。
このY株式会社は
もともとAさんの祖父(B氏の父)
が創立した会社で
もう50年も続く老舗の企業です。
Y株式会社は長年地域にも根付いており
創業者である祖父はやり手で
地域の市議会議員も
務めたことがある人でした。
ところが
このY株式会社
祖父が亡くなり
叔父のB氏に社長を交代したあたりから
雲行きが怪しくなっていきます。
B氏は会社の経営にあまり熱心ではなく
平日もゴルフ三昧
夜は毎晩のように繁華街に繰り出し
高級クラブやバーなどで
飲み歩く生活を続けていました。
そうしたこともあり
Y社の経営は傾き始めます。
それどころか
AさんがY社の社内の人から聞いた話では
B社長はどうも会社のお金の
使い込みもかなりやっているようで
会社の利益がかなりB社長の懐に
入っているのではないか
という噂を聞きました。
Aさん自身は
Y社の経営に関わっていませんが
Y社は祖父が創業した会社ですし
自分がその20%の株を持っている株主です。
このまま叔父のB氏の好き勝手にやられて
会社を潰されたりするのは
あまりにも悔しくてなりません。
このB社長の会社の私物化
暴走を止める方法はないか
というご相談を受けました。
Aさんは
Y社の株主であるので
株主としての権利を行使し
B社長の行動に一定の歯止めを
かける方法はなくはありません。
ただし、実際には
中小零細企業の場合
叔父であり
社長であるB氏と徹底的にたたかう
という覚悟が求められますが。
まず
この手の話の場合
「B社長がお金を使い込んでいるらしい」
という噂話だけでは
現に会社を牛耳っているB社長と
満足にたたかうことはできません。
Aさんがたたかうためには
そのための何らかの武器を
入手する必要があります。
そこで、Aさんは
Y社の株主として
Y社に対して
同社の会計帳簿の閲覧・謄写請求権
というものを有しています。
これは
総株主の議決権の3%以上の
議決権を有する株主
または
発行済株式の3%以上の株式を
有する株主に認められた権利です。
これらの株主が
会社の「会計帳簿またはこれに関する資料」
などの閲覧・謄写の請求ができます。
書面だけではなく
電子データで作成されているときは
電子データの閲覧やコピーの
請求ができます。
ここで言う「会計帳簿」
というのは総勘定元帳
仕訳帳のほか
現金出納帳、売掛金元帳などの
補助帳簿があります。
また
「これに関する資料」とは
契約書、領収書、請求書
納品書、伝票などがあります。
したがって
3%以上を有するAさんは
この会計帳簿閲覧・謄写請求権を行使して
Y社の会計に関する資料を
入手することができます。
なお
もし株主が、この権利を
株主の権利の行使等に関する調査以外の
目的で請求を行うときや
株主共同の利益を害する目的で
行使している場合などは
会社は会計帳簿の閲覧・謄写を
拒否することができます。
そうした例外事由がないにもかかわらず
会社が資料を開示しない場合は
株主は会計帳簿閲覧・謄写請求の
裁判を起こすことも可能です。
さて
こうしてAさんとしては
Y社の会計帳簿等の写しを入手し
分析します。
そうしたところ
叔父であるB氏が社長に就任して以降
さまざまな不正を行って
いることがわかりました。
具体的には
社長が夜の街で豪遊した飲食費
プライベートの海外旅行費用
などを会社の経費に計上し
会社のお金でこうした費用を
支払うなどしていました。
また
売上金の一部を会社に入れず
社長のポケットに入れて申告もしていない
そんな疑いのあるお金の流れも
わかってきました。
このように
社長など経営陣が会社を私物化し
会社に多額の損害を与えている場合
株主として取りうる次の手段が
株主代表訴訟を起こす
という方法です。
この株主代表訴訟というのは
株主が
社長など会社役員に対し
会社に与えた損害について
会社に賠償するように
請求するという訴訟です。
なお
この株主代表訴訟は
株式を公開していない会社の場合
株主であれば誰でも起こす
ことができるとされています。
なぜ株主にこのような権利が
認められているのかというと
結局社長など役員が会社を私物化し
会社の財務状況が悪化することは
出資者である株主の利益を
害することになるわけです。
こうした株主にとって
社長などの役員の暴走に
歯止めをかける1つの方法が
この株主代表訴訟
という制度なのです。
この株主代表訴訟は
あくまで会社に対して賠償しろ
と請求できるだけで
実際に訴訟を提起する株主が
お金を請求できるものではありません。
ただ
この訴訟の中で
B社長の経営の実態や
お金の流れなどがある程度明らか
になることが期待できるでしょう。
それが
会社を私物化し
暴走するB社長に対する一定の
歯止めにはなり得るかと考えます。
世の中の社長の中には
自分が社長に就任すると
会社の金は、オレの金だ!
と勘違いし
公私混同してしまう
というのは割とよく
聞く話ではあります。
しかし
こうした社長による会社の
私物化が暴走してしまうと
会社の財務状況が悪化し
最悪は会社の倒産という
事態も考えられます。
株式会社の制度というものは
決して社長の私物ではない
これは理解しておく必要がありますね。
それでは
また。
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Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。