新規採用募集のために
会社のPR用動画を作って
YouTubeにアップ。
そうしたところ
その動画に映った社員から
肖像権侵害
プライバシー侵害で動画の
削除を求められました。
会社としては
いったいどうしたら
良いのでしょうか?
(今日の「棒人間」 撮影した動画を削除??)
<毎日更新1298日目>
うちのYouTubeに出ることに喜んでくれていたのに、なぜだ???
先日
都内で工務店を営むA社長より
ご相談をいただきました。
このA社長は
YouTubeをやっていて
いろいろ会社のPR動画を
作っていました。
あるとき
新規採用者募集のための社内PR動画を
作ろうという話になって
動画を撮影。
A社長以下
社員全員が協力してとても良い
PR動画が出来上がりました。
おかげで採用募集も上手くいき
この人手不足の中
良い社員を採用することができました。
今回作ったPR動画
とても評判が良かったもので
そのままこの会社のYouTube
チャンネルに掲載し続けていました。
ところが、このときPR動画に写っている社員の1人が、その後会社を退職しましてね。
あらら、そうだったのですか、A社長。
それはまあ、仕方がないのですが、その元社員から最近、例のPR動画を削除してくれという請求が来たのです。
動画の削除、それはまたなぜですか?
その元社員が言うには、新規採用募集のために動画に協力したにすぎないのに、ずっと会社のYouTubeチャンネルにアップし続けるのは困る、と言うのです。
なるほど。
なんですか、「肖像権」や「プライバシー権」を侵害された、なんてことも言っていましたね。
確かに、一時期の新規採用募集の動画に映ることに同意していたとしても、その後YouTubeみたいに誰でも見られるプラットフォームに掲載し続けることについてまで同意していない、ということはあるでしょうね。
なるほど。
それから、その社員がもう会社を辞めているのに、そのYouTubeから、以前御社に勤めていたことがわかってしまう、というのは、確かにプライバシーの問題も出てきますね。
そうですね〜、どうしたら良いでしょう?
そうですね、A社長はYouTube作成のノウハウはあるのですから、いっそのことその動画は非公開にして、新しい動画を作り直したらどうですか?
そうですね、そうします。
肖像権やプライバシー権については
昨日のブログでも取り上げました。
おさらいですが
「肖像権」とは
つまり個人が自分の顔や姿かたち
といった「肖像」をコントロールし
他者が無断で利用することを
制限する権利のことを言います。
また、「プライバシー権」というのは
自分の私生活をみだりに
公開されない権利とか
自己に関する情報を
コントロールする権利
と言われます。
他人の容貌などを動画で
勝手に撮影したりすれば
この人の肖像権やプライバシー権を
侵害する可能性があるわけです。
この点
もちろん
その人が動画で撮影される
ことに同意している場合には
これらの権利侵害にはなりません。
問題は、何を
どこまで「同意」していたか
ということです。
冒頭のA社長の事例では
あくまで新規採用募集
のための会社のPR動画として
そこに映ることについては
同意していたわけです。
しかし
それをYouTubeチャンネルに
アップするということになると
話はまったく違ってきます。
YouTubeは
インターネット上で世界中に
公開されるプラットフォームです。
まして
その社員がもうその会社を辞めて
いるということになれば
状況もまったく違って
くるでしょう。
新規採用募集のPR動画に出演する
ことの同意があるからといって
その動画をYouTubeにアップする
ことまでの同意があるとは言えません。
まして
すでにその会社を辞めていて
しかもそのYouTubeの動画は
いつまでアップされ続けるのか
わからない。
YouTubeの動画で
その人が前にその会社の社員だった
ことがわかってしまいますが
これも立派な
「プライバシー情報」です。
そんなわけで
冒頭のA社長の事例では
その元社員の肖像権や
プライバシー権を侵害している
と言われてもやむを得ない
部分があるでしょう。
そんなわけで
その元社員から削除請求が来ている以上
A社長としても誠実に対応する必要があります。
1つの方法としては
その動画を編集し直して
その社員が映っていると
わからないように加工する
という方法があるでしょう。
それが難しい場合は
残念ですが
一旦その動画を非公開設定にした上で
新しい動画を撮り直す方が良いでしょうね。
あと
この手のトラブルを予防する
ために大切なポイントは
やはり事前に社員からきちんと
「同意書」をとっておくこと。
しかも
それが何についての「同意」なのか
明確にしておくことです。
単なる会社PRのための動画なのか
それにとどまらず
YouTubeにアップし
その動画を今後も掲載し続けるのか
はたまた
その動画から切り抜いた写真を
会社のホームページや
パンフレットに掲載するのか。
それぞれ
「同意」の質は違ってきますので
その旨を丁寧に説明し
「同意書」をとっておくのが
ベストです。
こうした「同意書」があれば
この手のトラブルを予防する
ことにつながります。
ただし
いったん「同意」したものの
やはりYouTubeなどにアップ
し続けられることに抵抗を
感じる社員もいるでしょう。
そうした社員から
やはり後になって動画を削除してほしい
という要望を受けることがあります。
その場合
法的な問題はともかく
私は
会社としてはできるだけその要望に沿った
誠実な対応をすべきだと思っています。
人の「肖像権」とか
「プライバシー権」というのは
そのくらいデリケートで微妙な権利だ
と言い換えることもできるでしょう。
中小企業でも
会社のPRや営業のために
動画やYouTubeを使う
ケースは多いでしょう。
その際
動画に映った社員と思わぬ
トラブルにならないよう
会社としてきめ細かな
配慮は必要ですね。
それでは
また。
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今回は、「フリーランス保護法で契約書は必要か?3条通知とは何か?」というテーマでお話ししています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。