社員を解雇する際に、解雇予告手当を支払う場合があります。
巷では、この「解雇予告手当」を支払えば、社員を解雇できると言われることがあります。
しかし、それは大きな誤解ですよ、というお話です(^ ^)
<毎日更新574日目>
先日、ある建設会社の社長さんとの会話で、いわゆる社員の解雇予告手当の話題になりました。
その社長さんいわく、
なんか、「解雇予告手当」という制度があると聞いたのですが。
ああ、「解雇予告手当」ですね。
これはまず、社員さんを解雇する場合には、少なくとも30日前に予告をしなければいけない、というものです。
その「解雇予告手当」で、なんか1ヶ月分の給料を支払ってどうのこうの、という話を聞いたんです。
それは、少なくとも30日前の予告をしないで解雇する場合には、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないというもので、これがいわゆる「解雇予告手当」と言われるものです。
なるほど、それで、その「解雇予告手当」として1ヶ月分の給料を支払えば、社員を解雇できると聞いたんですが、それは本当ですか?
いえいえ、それは大きな誤解です。
社員を解雇する場合に「解雇予告手当」を支払わなければならないということと、社員の解雇が法的に有効かどうかということはまったく別問題です。
なるほど、そうなんですね。
そもそも解雇が法的に有効であるためには、①解雇の客観的合理的理由と、②解雇の社会通念上の相当性という要件を満たす必要があります。
「解雇予告手当」さえ支払えば、解雇ができるというのは大きな誤解ですから、注意が必要ですね。
このように誤解しておられる経営者の方は、結構おられるようです。
そもそも日本の法律では、社員の解雇を厳しく制限しています。
すなわち、労働契約法16条では
と定められています。
すなわち、社員を解雇するためには、
という2つの要件が必要で、この要件を満たしていない解雇は、法的に「無効」であるとされるわけです。
詳しくは、コチラのブログ記事をご覧ください⏬⏬⏬
このように、法的に有効な解雇を行う場合であっても、会社が社員を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその社員に予告しなければならない、とされています。
これは、解雇というのは、その社員のいわば生活手段を奪うものであり、社員に与える影響が大きいので、原則として即時の解雇は認められず、しかるべき時間的余裕を置いて予告しなければならない、としたものです。
そして、もし会社がこの予告をしないで解雇する場合には、代わりに30日分以上の平均賃金を支払わなければならない、と定められており、これがいわゆる
と呼ばれるものです。
ただ、さらに例外的に、会社が解雇予告手当を支払わないで、即時に社員を解雇できる場合があります。
それは、
の2つの場合です。
ただ、この場合には、会社は所轄の労働基準監督署長から、「除外認定」というものを受ける必要があり、実際にはなかなか面倒ではあります。
ただ、いずれにしても、社員を解雇するには上記の厳しい要件があり、この要件を満たしていない解雇は法的には無効となってしまいます。
「解雇予告手当」さえ払えば法的に有効な解雇ができる、というのは大きな誤解ですので、注意が必要です。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
社員の解雇に関しては、安易に現場の判断で「解雇」してしまうと、後々裁判などで不当解雇を争われる可能性があります。
私の弁護士としての使命は、中小零細企業のトラブルを
余計な「裁判沙汰」を避けるためにも、正しい知識を持っておくことは大切ですね!
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また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。