
契約に違反すると
債務不履行といって
損害賠償責任が発生する
場合があります。
しかし
契約の相手方の方にも
落ち度があった場合
「過失相殺」といって賠償額が
その分減額されることがあります。
(今日の「棒人間」 痛み分け??)
<毎日更新1527日目>
オタクの工事が契約書に書かれた「工期」に間に合わなかった!これは契約違反じゃないか!
いや、しかしそれはオタクがいろいろと・・・
うるさい!「工期」は契約書にきちんと書いてある。それに間に合わなかったんだからオタクの契約違反だ!損害賠償を請求する!
工務店が請け負う建築請負契約。
通常
契約書には建物の完成及び引渡が
行われる「工期」が定められます。
この契約書に書かれた「工期」には
いったいどのような意味が
あるのでしょうか?
契約というものは
当事者間でこういう約束をした
ということを意味しますので
基本的にその内容には
「拘束力」があります。
「拘束力」というのは
相手の承諾なしにその
約束を変更できない
ということです。
ですから
工務店側に落ち度があり
それによって「工期」に
間に合わなかったということになれば
それは工務店側の契約違反
ということになります。
契約違反というのは
法律上は「債務不履行」と言われます。
その場合
契約の当事者は
違反した相手方に対して損害賠償を
請求することができます。
損害賠償について契約書に
規定がある場合もありますが
仮にそうした規定がなくても
損害賠償請求は可能です。
すなわち
民法415条1項で
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
と規定されています。
「債務の本旨に従った履行をしない」
というのは
契約違反がその典型例で
工務店側の落ち度で「工期」に
間に合わなかった場合も
これにあたります。
ここで考えられる顧客の
「損害」というのは
例えば、新しい家の工期が
間に合わなかったため
その間ホテル住まいを
余儀なくされた場合の
宿泊費などが考えられます。
それでは
工務店の工事が「工期」に
間に合わなかった原因が
主に注文した顧客の側に
あった場合はどうなるのでしょうか?
たとえば
よくある例ですが
契約が成立し
工務店が着工した後になり
顧客の側で
契約書に記載のない様々な
仕様変更を求めてきたり
追加工事をいろいろと要求してきた。
工務店側でその顧客の
要求に従っていたため
当初の「工期」に間に合わなかった
ということがあり得ます。
そんな場合にまで
工務店側は上記の「債務不履行責任」を
負わなければならないのでしょうか?
実は
このようなケースについても
民法に規定があります。
すなわち
民法418条では
債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
と規定されています。
これを
「過失相殺(かしつそうさい)」
と言います。
すなわち
工務店側の債務不履行
(上記の例では、工期に間に合わなかった)
等について
債権者(つまり
上記の例では発注者である顧客)に
過失があったときです。
このような場合には
本来工務店側が支払うべき
損害賠償の額から
顧客側の過失の割合に応じて
金額を減額することができる
という制度です。
まぁ
いわゆる「痛み分け」
といったところでしょうか?
このように
実際の取引社会のトラブル解決
には「バランス」が重要で
民法はまさに契約当事者の
バランスを図ることを狙っています。
つまり
原則として契約の違反があれば
それは違反した工務店に
まず責任を負わせる。
しかし
注文者(顧客)の側にも
債務不履行の発生の原因がある
というような場合には
顧客にも一定の負担を求める。
このようにして
発生した損害を契約当事者で
公平に分担するよう
バランスを図っている
というわけです。
ただ
この工務店としては
やはり顧客から仕様変更や
追加工事の依頼を受けた段階で
その時点における約束内容を
きちんと書面かしておくべきでした。
つまり
「合意書」とか「覚書」といった
形で構いませんので
新たな追加工事の内容や代金
それによって当初の「工期」の延長が
見込まれるのであればその旨を
きちんと記載しておくべきでした。
万が一トラブルが深刻化した場合には
民法は上記のようにある程度
バランスは図ってくれます。
しかし
いったん「裁判沙汰」になれば
当事者それぞれ大変な
負担を負うことになり
時間もかかります。
やはり
このブログでもお伝えしているとおり
トラブルや「裁判沙汰」を事前に
予防することが大切です。
そのためには
常日頃からそうした意識を持ち
工夫をすることにアンテナを
張っておきたいものですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。