
社員の採用にあたり
一定の期間を区切って社員の
適性などを見極める「試用期間」
しかし
その期間内で社員の適性を
判断できなかった場合
この「試用期間」を延長する
ことはできるのでしょうか?
(今日の「棒人間」 延長できる??)
<毎日更新1617日目>
昨日のブログでは
問題社員についての解雇で
会社が裁判で敗訴した事例を
取り上げました。
「解雇は最終手段」・・・でも限界? 裁判で負けた企業の実例から学ぶ
社内でいろいろ問題を
起こす社員であっても
会社が解雇するのは非常に
大きなハードルがあります。
昨日取り上げた事例では
解雇のほかにもう1つ
「試用期間」の延長ができるか?
という論点があります。
具体的には
昨日の事例で
3ヶ月の試用期間が過ぎようとするとき
上司はこの社員に退職を勧めました。
しかし
この社員は「辞めるつもりはないです」
とこの提案を拒否。
そこで
会社は
6月末までだった試用期間を1ヶ月延長。
7月からは
会議室にこの社員の席を設け
特に仕事を与えないう通称
「追い出し部屋」に配置。
この間も
上司や役員からこの社員に対して
「退職勧奨」を続けましたが
この社員はそれでも退職を拒否。
そこで
会社はさらに試用期間を1ヶ月延長し
その上で8月末に解雇予告通知書を交付し
9月末でこの社員を解雇しました。
この事例の裁判では
上記のとおり「解雇」の有効性のほか
会社のこうした「試用期間」の延長が
そもそも許されるのかが争点となったわけです。
この点
「試用期間」というのは
社員を採用するときに
実際の勤務を通じてその社員の
適正などを見極め
本採用をするかどうかの判断を
するための期間のことを言います。
ところが
あらかじめ定められた
「試用期間」の間に
この社員の適性などを
見極められないことがあります。
そのような場合に
会社がこの「試用期間」を延長する
ことができるかどうかが問題となります。
この点
会社が「試用期間」を延長するためには
あらかじめ雇用契約書や就業規則などで
などを明確に定めておく必要があります。
さらに
そうした定めを社員にあらかじめ
周知しておくことも必要です。
それでは
こうした定めがない場合には
「試用期間」の延長は
できないのでしょうか?
この点
試用期間延長の定めがない場合でも
やむを得ない事由がある場合で
社員が試用期間の延長に真に
同意している場合には
延長が可能とされています。
ただし
上記の要件をクリアしても
単なる会社側の都合のみで延長
できるわけではありません。
試用期間を延長する
「合理的理由」が必要とされています。
具体的には
・病気や怪我などによる長期休業で、勤務日数が少なく、適格性の判断が十分に行えなかった。
・無断欠勤や遅刻が多い、勤務態度が著しく悪いなど、労働者としての適格性に問題があるものの、改善の余地があるため猶予を与える。
・採用選考時に申告された能力や経歴に明らかな不足・詐称が判明した。
・業務上の指示に従わない、協調性に欠けるなどの問題が見られる。
などの場合には
「合理的理由」があると
判断されやすいでしょう。
上記の事例では
会社側はまさにこの「合理的理由」のある
試用期間の延長であると主張しました。
しかし
判決は
研修時点でこの社員の問題が報告されていた
にもかかわらず直接の指導をしていなかった点を
指摘しています。
その上で
と判断しました。
この事例では
会社がこの社員を「追い出し部屋」
に置いたことや
上司や役員からの「退職勧奨」に
問題があったことなども考慮された
判断だと考えられます。
法律上は
「試用期間中」であっても
社員との雇用契約は成立して
いるとされています。
それだけに
「試用期間」の延長も
実際にはそれなりに厳しく
判断されているということは
覚えておかれた方が良いと思います。
それでは
また。
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