意外なことですが、中小零細企業の社長さんと話を
していると、会社が苦しくなれば社員の給料を下げ
られる、と思っている人がいるようです。
しかし、社員の給料については、原則として会社の
判断で一方的に減額することはできませんので、注意が必要です。
(すぐに中身が減ってしまうワイングラス@横浜都橋商店街)
<毎日更新591日目>
長引くコロナ、ウクライナの戦争、円安などで、中
小零細企業の経営もかなり厳しくなっているところがあります。
このところ、よく建設関係の会社の社長さんから聞
くのは、円安の影響などで原材料のコストが異常に
上がっているということです。
原材料コストが上がった分、自社が売る商品やサー
ビスの単価を上げることができれば良いのかも知れ
ませんが、そうもいかない会社も少なくありません。
そこで、よくあるご質問として、
会社の経営が厳しいので、社員の給料を下げたい
というものです。
会社の経営が苦しいからと言って、法的に社員の給
料を下げることができるのでしょうか?
また、もしできるとして、それはどのような手続き
を踏む必要があるのでしょうか?
この点、社員の労働条件は、会社と社員との合意、
すなわち労働契約に基づいて決定されるのが原則です。
そこで、労働条件を変更するという場合も、会社と
社員との合意に基づいて行われるのが原則となります。
社員の給料の金額も、これは労働条件ということに
なりますので、会社が一方的に社員の給料を減額す
る、ということはできません。
それは一種の
ということになってしまいます。
ただし、もし給料などの労働条件が会社の就業規則
で定められている場合で、次の要件を満たす場合に
は、就業規則を変更して労働条件を変えることができます。
つまり、その場合には例外的に社員の同意がなくて
も労働条件を変更することが可能になります。
すなわち、会社側が
というような場合です。
ただし、給料の減額は、労働条件の変更の中でも、
社員の生活に直接大きな影響を与えるものですので、
実際にはかなりハードルが高いです。
上記の例で言えば、経営悪化がかなり客観的な資料
等から明らかである必要があるでしょう。
また、仮に減額ができる場合でも、おおむね10%
程度の減額であれば認められる可能性がありますが、
それを超える大幅な減額は、就業規則変更の合理性
がないとされる可能性が高いでしょう。
こうした法的なルールを知らずに、一方的な給料の
減額を行うと、社員とのトラブルに発展し、最悪の
場合は「裁判沙汰」になる恐れもあります。
私の弁護士としての使命は、中小零細企業のトラブルを
「裁判沙汰」を避けるためには、やはり給料の減額
について適切な説明とプロセスを踏むことです。
社員に対して、会社の決算資料なども示しながら、
どうしても給料を(一時的にでも)減額せざるを得
ない、ということについての真摯な説明が欠かせないでしょう。
その上で、給料の減額について社員に同意をしても
らう、というのがやはり一番無難な方法です。
実際、会社側が誠意を持って、事前に適切な対応を
していれば、社員の納得を得た形で、無用なトラブ
ルを避けることができることも多いものです。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
ちなみに、こういう場合に最悪の対応は、会社側が
秘密主義になって、一方的で強硬な態度を取ること。
社員からしてみれば、会社に対する疑心暗鬼となり、
到底納得できないでしょう。
やはり経営者としては、苦しい時こそ社員に誠意を
持って対応することが求められていると思います。
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今回は、社員が会社に対して損害賠償の責任を負っているときに、会社がその社員に支払う給料から、損賠賠償のお金を天引きすることはできるのか?こんなテーマでお話しています。
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Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。