世の中には、
大家さんから家賃を値上げしてくれ
と言われると、
それに応じなければならないと
勘違いしている人が少なくありません。
しかし、
大家さんが決まっている家賃を
一方的に値上げできるものではありません。
このことを知らないと、
ときに企業の存亡にも関わりかねない、
そんなお話です。
(顔見せは「No」?)
<毎日更新672日目>
先日、
あるカリスマ美容師さんの
お話を聞く機会がありました。
その方は、
かつて従業員をたくさん雇うような
大きな美容院を経営していました。
しかし、
従業員さんが辞めて人手不足になったり、
不況の影響などで、
だんだんと美容院の経営が
苦しくなってきました。
弱り目にたたり目とは
よく言ったもので、
そんな折、
美容院の店舗を借りている
大家さんから、
こう言われます。
なんでも、
月額40万円の家賃を、
いきなり50万円に値上げする
と言うのです。
突然、
25%の家賃値上げです。
その美容師さんは、
いくらなんでもそれは困る、
とかけあいましたが、
大家さんは、
と、
こう言われたそうです。
しかもこの大家さん、
土地持ちらしく、
50歳くらいのオッサンで、
頭は金髪で日焼けして、
働かないで遊びほうけている
ような人だったらしい。
結局、
この美容師さんは、
値上げされた家賃を払うことは
難しいと判断し、
泣く泣くお店を閉店して
しまったそうです。
この美容師さんは、
大変に腕の良い人で、
他県から片道4時間もかけて通って
くるお客様もいたそう。
閉店するときは、
多くのお客様に惜しまれたそうです。
私はこの話を聞いて、
唖然(あぜん)としました。
法律的には、
いくら大家であっても、
いったん契約で決まっている家賃を、
一方的に値上げするなどということは
できません。
もしこの美容師さんが、
もう少し法律の知識があったら、
あるいは、
その時点で弁護士に相談に行っていれば、
と思うと、
とても残念に思いました。
じゃあ、
法律はどうなっとるのか?
少しだけ解説を。
もし大家さんが、
貸している物件について、
家賃の値上げをしたいと考えた場合、
次ような手続きが必要です。
大家さんが、
家賃の増額請求ができる場合について、
借地借家法という法律で、
次のように定めています。
土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったとき
ですから、まず、
こうした状況がなければ、
家賃の増額の請求はできない
ことになります。
では、逆に、
大家さんがこうした近隣の物件と
比較して、家賃が不相当になった
と判断した場合は、
一方的に値上げができて
しまうのでしょうか?
この点、
借地借家法の建て付けは、
あくまで家賃の増額については、
貸主と借主という当事者間の協議、
つまり話し合いによって決める
ことを前提にしています。
ですから、
仮に大家(貸主)が家賃の増額を
求めたとしても、
借主がそれに「No」と言った場合には、
一方的に値上げをすることは
できないのです。
そういう場合、
大家としては、
当事者間で協議しても家賃の増額の
合意ができないときは、
家賃の増額を求める調停なり
裁判なりを起こす必要があります。
その中で、
大家(貸主)は、
現在の家賃が近隣の物件等の相場と
比較して不相当である、
ということ等を客観的に証明する
必要があります。
そんなわけで、
大家(貸主)としては、
家賃の値上げをしたいと思えば、
借主と話し合って合意するか、
合意できなければ、
調停や裁判といった手続きを
経る必要があるわけです。
しかも、
調停や裁判では、
現在の家賃が不相当であることを
証明しなければならない。
そんなわけで、
法律的にいうと、
大家さんが現在の家賃の値上げを求めることは、
かなりハードルが高いことが多いのです。
これは、
上記で見た借地借家法という法律が、
基本的に借主を保護するための法律
であることによります。
すなわち、
大家の都合で一方的に家賃を値上げできる、
ということになったら、
物件を借りている方は
たまらないでしょう。
いつ大家から値上げされるかわからない、
ということになると、
安心してその借りている物件に住んだり、
そこでビジネスをすることなど
できなくなってしまいます。
そんなわけで、
大家からの一方的な値上げは、
上記の借地借家法で制限されている、
というわけです。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
ところが、
世の中には、
上記の美容師さんの例のように、
そんな法律のことを知らない
人も少なくありません。
つまり、
大家さんに値上げを言われると、
それに従わなければならないと
思い込んでしまっている。
上記の美容師さんも、
このことを知っていれば、
変な金髪で日焼けのオッサンに
屈することもなかったのに、
と思うと残念ですね。
でも、
法律を知っているか知らないか、
必要なときに適切に専門家の
アドバイスを受けられるか、
これはときに企業の存亡に
影響することがあるのです。
そんなわけで、
弁護士からの情報発信も、
まだまだ足りないな〜と
反省した次第。
これからも、
ブログでお役立ち情報を
発信していかねば、ですね!
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。