いったんは社員の採用を
決めた内定を取り消す
「内定取消し」
この「内定取消し」は、
法的にどのような理由なら
許されるのでしょうか?
「内定取消し」が
許される場合と、
許されない場合を
まとめてみました。
(今日の「棒人間」 その内定取消しは許される??)
<毎日更新1037日目>
3月になっても
まだまだ寒いですが、
暦の上ではもう春。
春といえば、
新入社員が入社する季節です。
同時に、
この時期になると、
経営者の方から、
いったん社員の採用内定を
出したんだけれども、
いろんな事情でそれを
キャンセルしたい。
いわゆる「内定取消し」が
法律上許されるかどうか、
というご質問を受けることが
あります。
そこで、
この「内定」というものを、
法律的に分析してみます。
そもそも、
「契約」というものは、
一定の例外を除いて、
「申し込み」の意思表示と、
「承諾」の意思表示が合致
したときに成立します。
この点、
新規で社員を雇うとき、
会社は新規採用者の募集を
出したりします。
この募集に対して、
入社希望者がこれに
「応募」する行為は、
法律的には労働契約(雇用契約)
締結の「申し込み」
にあたります。
この「応募」に対して、
会社が社内の選考を得た上で、
内定の通知を行うことは、
上記の「申し込み」に対する
「承諾」となります。
そして、
会社が「内定通知」
を行うことで、
入社予定日までに
採用内定取消事由が
生じた場合には、
解約できる旨の
留保権がついた
労働契約(雇用契約)が
成立したことになります。
この点、
多くの会社では、
採用内定の取消事由は、
採用内定通知書などに
書かれています。
しかし、
そこに書かれている
取消事由があれば、
当然に会社が内定を
一方的に取り消す
ことができる、
ということには
なりません。
というのは、
上記のように、
「内定」の通知によって、
すでに労働契約(雇用契約)が
成立してしまっています。
ですから、
会社がその「内定」を
取り消す行為は、
労働契約の一方的解約、
つまり一種の「解雇」
となってしまうからです。
ただ、
まだ「内定」の段階ですので、
通常の社員の「解雇」ほど厳しい
ハードルがあるわけではありません。
この点、
裁判例では、
採用内定の取消しが
認められるのは、
「採用内定当時知ることができず,また知ることが期待できない」事実が後に判明し,しかも,それにより採用内定を取り消すことが「客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる」
場合に限られる、
とされています。
実際に、
内定取消し事由として
認められるのは、
たとえば、
などがあるでしょう。
逆に言えば、
こうした事情がなく、
たとえば、
単に「協調性がない」
という理由だけでは、
内定取消しは難しい
ものと考えます。
世の中には、
旅行の「キャンセル」のように、
簡単に「内定取消し」
ができると思っている
経営者の方もおられますが、
それは誤解です。
もし要件を満たして
いないにもかかわらず、
安易に「内定取消し」
をしてしまうと、
後々応募者から、
契約違反ということで、
損害賠償請求などの「裁判」を
起こされるリスクもあります。
ただ、コロナ禍などでは、
実際に会社の業績悪化が
理由で多くの会社で
「内定取消し」がなされた
と聞いています。
上記の要件でもありましたが、
内定後に会社の業績が
予想外に大幅に悪化して
しまったような場合には、
例外的に内定取消しが
認められる場合もあります。
少し古い事例ではありますが、
派遣会社が、
大手家電量販店からの
業務委託契約締結を見込んで、
派遣社員の採用内定を
出しました。
ところが、
その後、
大手家電量販店との
業務委託契約の締結に
至らなかったので、
派遣会社が派遣社員の
採用内定を取消した
というケースがあります。
このケースで、
結論的に採用内定取消しは
「有効」であると判断した
裁判例があります。
明日は、
この裁判例について
取り上げてみたい
と思います。
それでは、
また。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。