業務委託契約の契約期間中に
一方的に契約を解除された。
果たしてそんなに簡単に
契約解除できるのでしょうか?
(今日の「棒人間」 「訴えてやる!」という人の表情)
<毎日更新1106日目>
機械設備やシステムの保守・管理を
専門とするA社の社長から
先日ご相談を受けました。
この会社は
ある取引先から
システムの保守管理を
期間1年間という契約で
委託されていました。
この取引先との契約は、あと半年ほど残っているのですが、先日突然、この取引先から、このシステムの保守管理の業務委託契約を解除する、と一方的に通告してきたのです。
なるほど。先方が業務委託契約を解除する理由は何なのでしょうか?
はっきりしないのですが、どうもうちよりも費用の安い業者を見つけたらしく、そちらに乗り換えようとしているようなのです。
それが本当だとしたら、ちょっとひどい話ですね。
そうなんですよ!
取引先との業務委託契約は、きちんと契約書も作って、あと半年も期間が残っているのに、こんなに簡単に解除ができるのですか?
そうですね、契約書に解除に関する定めはありますか?
それが、契約を結んだ当時は、お互いに契約期間の途中で解除することなど想定していなかったので、解除についてはあまりきちんとした定めがないんです。
なるほど。そうすると、結論的には、契約期間の途中であっても、解除自体は有効にできる、ということになります。
そ、そんな!それはちょっとおかしくないですか?
実は、業務委託契約というのは、当事者間の信頼関係が重要であるという側面がありまして。なので、当事者はいつでも解除することができるという原則があるのです。
それじゃあ、うちは泣き寝入りですか?
いや、ちょっと待ってください。
業務委託契約は、解除自体は有効ですが、それによってこちらが損害を被った場合には、損害賠償請求ができることになっています。
損害賠償、というと具体的にはどんな内容ですか?
ご相談の件ですと、契約期間が1年間と定まっていますので、残りの期間分の御社が受けるべき報酬額が、御社が被った損害ということで、この金額を請求できることになります。
ちょっと意外に思われた方も
おられるかも知れませんね。
業務委託契約を締結して
契約書も作り
契約期間も決まっているのに
当事者が一方的に期間の
途中で解除ができてしまう。
実は
業務委託契約は
民法上の委任契約の要素が
あるとされています。
委任契約では
当事者の一方は
いつでも契約を解除する
ことができるとされています。
これは
委任契約というのは
当事者間の信頼関係が重要だと
されていることによります。
いくら契約期間がまだ
残っているからといって
当事者間で信頼関係が
失われているのに
契約を続けさせるべきではない
という考え方が背景にあるのです。
冒頭のA社の事例でも
システムの保守・管理というのは
場合によっては会社の命運を左右する
重要な業務と言えるでしょう。
このような業務を
信頼関係が失われた状態で委託
し続けるというのは通常困難です。
そこで
特に当事者間で解除権を行使しない
という合意をした場合を除き
期間の途中であっても
契約の解除ができる
という結論になるわけです。
ただし
この場合
システムの保守・管理を委託
されていたA社としては
契約期間の中途で解約されてしまっては
損害を被ることになります。
1年間はシステムの保守・管理
の業務を委託されていて
その分の報酬が入ることが
前提になっているからです。
そこで、民法は
このような場合の手当を
する規定を置いています。
すなわち
民法651条2項では
契約を解除した当事者は
相手方に不利な時期に
契約を解除した場合には
相手方の損害を賠償
しなければならない
と定められています。
この場合
契約を解除されたA社が
被る損害というのは
残りの契約期間分のA社が本来
受けるべきであった報酬額
ということになります。
したがって
この場合A社は
契約を解除した取引先に対し
残りの期間分の報酬額を
損害賠償という形で請求
することができる
という結論になるのです。
この場合
実際問題として
取引先がすんなりと
損害賠償金を支払って
くれれば問題はありません。
しかし
他の業者の方が安いからといって
契約を解除するような取引先です。
そうすんなり払って
くれるとも考えられず
そうなると
最悪は「裁判沙汰」と
いうことになります。
この点
私のミッションは
ということ。
それでは
業務委託契約において
冒頭のようなモメごとを
予防するためには
どうしたら良いのでしょうか?
それは
やはり業務委託契約書を作成する段階で
契約の中途解除に関する規定を
定めておくことです。
具体的には
契約期間中は解除ができない
と定めることも1つの方法です。
上記の民法のいつでも
解除できるという規定は
任意規定といって
当事者間でこれとは異なる
合意をすることもできる
とされているのです。
あるいは
契約期間中に解除ができるとしても
その場合には
相手方は残りの期間分の報酬を請求できる
ということを契約書に定めておく。
こうしておけば
冒頭のようなトラブル
「裁判沙汰」を予防する
ことができるわけです。
冒頭のA社も
契約書を作っていたにもかかわらず
取引先とトラブルになってしまいました。
こんな風に
契約書というのは
作れば良い
というものではなく
中身が大切です。
契約書の内容が
きちんと将来起こりうるトラブルを
予防できる内容になっているか
自社にとってリスクの
少ないものになっているか。
これらをきちんと確認した上で
契約を結んでおくべきです。
もし
契約書の内容がよくわからない
という場合は
専門の弁護士に相談する
ことをお勧めします。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。