社内で
部長が部下にパワハラを
行なっていたことが発覚。
しかし
この部長をそう簡単に
解雇することはできません。
会社としては
どう対処したら
良いのでしょうか?
(今日の「棒人間」 パワハラ部長をどうするか??)
<毎日更新1227日目>
兵庫県の某知事の話題ではないですが
世の中
パワハラが社会問題になっています。
中には
社内でパワハラが発生し
そのパワハラを行った加害者の
社員をどう対処するか
頭を痛めている経営者の方もおられます。
先日
都内で不動産会社を営むA社長より
ご相談をいただきました。
実は、うちの営業部長が部下に対してパワハラを行っていることが発覚したのです。
具体的には、どんなパワハラでしょうか?
それが、部下に対して暴言を吐くとか、物を投げつけるなどの行為を行っていたそうで、被害を受けた部下の方は、今休職してしまっています。
なるほど、それは深刻ですね。
被害を受けた社員は、もうパワハラ部長を辞めさせてくれないと、会社に戻れないと言っているのです。
なるほど、困りましたね。
それで、弊社としては、このパワハラ部長に責任をとってもらい、会社を辞めてもらいたいのですが、やはり解雇は難しいのでしょうか?
そうですね、社員の解雇には、①解雇の客観的合理的理由と、②解雇の社会通念上の相当性という2つの厳しい要件があり、ちょっと難しいでしょうね。
それでは、こういう場合、どうしたら良いでしょうか?
まず、会社として加害者への注意・指導を行なった上で、被害者に謝罪をさせることです。
なるほど、確かにそれは必要ですね。
その上で、そのパワハラ部長の配置転換とか、役職を降格させるとかいった処分を検討すべきでしょう。
なるほど。
その上で、どうしてもその加害者に社内にいてもらうことが難しい場合は、自ら退職してもらうよう説得する退職勧奨を行うなど、段階的に対応することが必要でしょうね。
なるほど、よくわかりました!
まず
法律上職場における
「パワハラ」というのは、
を言うとされています。
問題は
社内でパワハラを行なった
社員を解雇できるかどうか
という問題です。
というのは
上記のA社長の会社のように
パワハラを受けた被害者としては
加害者とはもう一緒に仕事はできない
加害者に辞めてもらいたいと
考えることも少なくないからです。
ところが
解雇は
このブログでも
よくお話ししているように
という2つの要件を
満たす必要があり
これを満たさない解雇は
「解雇権の濫用」として
解雇が法的に無効とされます。
事実上
会社側にとって解雇のハードルは非常に高く
A社長の会社の件でも
パワハラを行なった部長を
いきなり解雇することは
この要件を満たさず
解雇権濫用とされる
可能性が高いでしょう。
というのは
解雇というのは最も
重い処分であるため
会社としても
まず解雇以外の手段を
きちんと講じる必要がある。
そうしたこともせず
いかにパワハラ社員とはいえ
いきなり解雇してしまうことは
特に②の「解雇の社会通念上の相当性」の
要件を満たさない可能性が高いでしょう。
そこで
こうしたケースでは
まず
解雇以外にこのパワハラ加害者に対して
とりうる方法を考える必要があります。
まず
当然ですが
会社として
このパワハラ加害者である部長に対し
きちんと注意・指導を行うということです。
これをせずに
会社として黙認しているなどということは
もってのほかで
会社の法的責任(安全配慮義務違反)を
問われかねません。
そして
可能であれば
加害者から被害者に対する
謝罪をさせることも必要でしょう。
その上で
加害者と被害者を引き離すために
加害者の配置転換や
人事異動などを検討します。
パワハラを行なった部長が
そのまま役職者で
居続けるのは適切ではない
という判断もあり得るでしょうから
部長の降格処分や
減給処分も検討すべきでしょう。
これらの方策を尽くしても
なおこの社員のパワハラが
治らないなどの事態がある場合には
この社員に自ら会社を辞めて
もらうように説得する退職勧奨を
行うことがあり得ます。
いずれにしても
ここで1つ注意しなければ
ならない問題があります。
それは
こうした社員の降格や減給といった
「懲戒処分」を行うためには
あらかじめ会社の就業規則に
その定めを置いておかなければならない
ということです。
就業規則は
常時10人以上の社員を雇っている会社には
法律上作成が義務づけられます。
よく
社員が10人未満の会社の社長さんで
「うちは社員が10人いないから
就業規則はいらない」と
言っている人がいますが
これはお勧めしません。
それは
いざ社員に懲戒処分を行う必要があるときに
それができなくなってしまうからです。
社内にパワハラがあって
加害者に適切に懲戒処分を
課すことができるためにも
やはり就業規則は必要です。
このように
就業規則は
何も社員だけに有利なものではなく
いざという時に会社を守る
武器にもなるものです。
もし自社に就業規則がない
という方は
これを機に作られることを強くお勧めします。
また
就業規則がある会社も
自社の就業規則の中の
きちんと社員の懲戒に関する
規定が整備されているか
これを機に見直しをされる
ことをお勧めします。
兵庫県の某知事の話題ではないですが
今の時代
パワハラをはじめハラスメントに
対する人々の意識は
とても高くなっています。
万が一
社内でパワハラ問題が起きたときにも
きちんと対処できるように
準備は進めておきたいものですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。