
子どもの保育料は業務に関連する
「必要経費」と認められるべき。
このように主張して
個人事業主の方が裁判を起こしました。
果たして
保育料は「必要経費」になるのでしょうか?
(今日の「棒人間」 それって経費になる?)
<毎日更新1395日目>
子どもの保育料は「必要経費」になりますか?
なりません。
それはおかしい。親が働いてないと保育園に入れないのだから、保育料は業務上の必要経費と言えるのでは?
保育料が所得税法上の「必要経費」
と認められないのは違法だとして
個人事業主2名が国を相手に
裁判を起こしました。
保育料「必要経費」と提訴 東京と大阪の個人事業主、税務署に控除求めるも認められず
2名の原告のうちの1名は
なんと弁護士の方だそうですね。
今回の原告2名は
それぞれ子どもを認可保育園に通園させており
税務署に保育料を「必要経費」として
認めるように求めたそうです。
具体的には
2023年分の確定申告を行った際
税務署に対し
子どもを不要するために支出した保育料を
「事業所得・雑所得の総収入金額から控除すべき」
と主張して
所得税などの更生の
請求を行いました。
しかし
税務署は
保育料は業務に関係のない
家庭内の支出であるとして
「必要経費」として認められない
と通知しました。
具体的には
保育料は
業務に直接関係ない家事上の
「家事費」に位置付けられているとして
更生すべき理由がないという
処分通知を出しました。
そこで
この2名は
この税務署の処分の取消しなどを求めて
裁判所に提訴したとのことです。
ここで
ちょっと整理しますと
「必要経費」というのは
法人や事業主が
事業を行うために支出した
経費のことです。
税金の計算に当たって
「必要経費」は収入から差し引く
ことができるとされているものです。
具体的には
所得税法の37条1項で
次のものが「必要経費」とされています。
(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
簡単に言えば
「必要経費」として認められるのは
所得(収入)を得るために
発生した費用です。
他方で
「家事上の経費及びこれに関連する経費」などは
いわゆる「家事費」として
「必要経費」には該当しないと
されています(所得税法45条1項1号)。
たとえば
業務に関係のない
プライベートな飲食代や
家族旅行の費用などが
この「家事費」の
典型とされています。
上記の事案で
税務署の見解では
というものでした。
これに対し
原告側は
就労のために子どもを保育所に預け、保育料を支払っている。
また、原告らが居住する自治体も、就労していることを理由として保育の必要性を認めている。
したがって、業務に関連する支出と言え、保育料は「必要経費」にあたると考えるべきだ
と主張しているようです。
いわば
業務に関連する「必要経費」の解釈をめぐり
多様性社会の中で
「必要経費」をどのように捉えるべきか
の見解の対立と言えそうです。
私も息子を保育園に預け
朝の送り(たまにお迎えも)を
担当していたので
懐かしいですね。
経営者や独立事業者の中にも
子どもを保育園に預けて仕事を
している人もおられるでしょう。
夫が外で働き
妻が専業主婦をするのが当たり前
という時代ではなく
今は共働きも増えていますし
生き方や働き方が多様化しています。
原告側は
税務署が保育料が「家事費」である
とする考え方の根っこに
という古典的な家族観があり
それは今の社会の実態に
合っていないのではないか
と問題提起しています。
たしかに
外食費や旅費なども
完全にプライベートな
支出であれば「家事費」です。
しかし
いったん「業務に関連する」とされれば
「接待交際費」や「旅費交通費」などの
「必要経費」と認められる可能性があります。
そう考えれば
経営者が子どもを保育園に預ける保育料も
業務に関連した「必要経費」と
認められるべきだとの考え方には
一理あるような気がしますね。
こんな風に
「必要経費」や「家事費」の概念も
固定的なものではなく
時代の流れによってある程度柔軟に
解釈が変化していく部分もあります。
今後のこの裁判の
行方が気になりますね。
さて
今日のダジャレを1つ。
経費で落とすつもりが、税務調査で否認されて涙が落ちた😭
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。