企業のハラスメント対策として、相談窓口の設置や相談体制の整備が法律上義務づけられています。
にもかかわらず、そうした相談窓口が利用されずに、SNSでいきなり社内のハラスメント被害の事実を暴露される、というケースが少なくありません。
なぜそのようなことが起こるのでしょうか?
(とある場所の相談会の会場受付)
<毎日更新576日目>
少し前のことになりますが、帝京大学の男子学生が男性教授から差別的な対応を受けたとする内容がTwitterに投稿され、大学側が事実関係の調査を始めた、という報道がありました。
このように、ハラスメントの被害などをSNSに投稿され、企業や組織がダメージを受けるケースが増えているようです。
この点、セクハラやパワハラに関しては、事業主にはそうしたハラスメントを防止するための対策を講じることが、法的な義務とされています。
具体的には、会社には次のようなハラスメントの対策が求められています。
・会社の方針を明確化して就業規則に定める
・相談窓口を設置し、相談体制を整備する
・被害者や加害者のプライバシーを保護するための措置
・相談しても不利益を受けないことの周知
・相談があった場合の迅速な事実確認
・被害者に対する配慮の対応
・加害者に対する処分
・再発防止措置
つまり、会社の中にきちんとしたハラスメントの相談窓口を作ることなど相談の体制を整備すること、被害者が相談しても不利益を受けないことの告知や、相談があった場合の迅速な事実確認なども義務づけられています。
こうした法律上の義務を根拠に、今では多くの会社で、こうしたハラスメントに関する相談窓口を設けているはず。
しかし、実際にはこうした相談窓口が利用されず、SNSで組織内のハラスメントを告発するという例が少なくないようです。
社内に相談窓口があるにもかかわらず、そこを利用せずに、SNSで外部にぶちまける。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
その理由はとてもカンタン、
転職エージェントのワークポートというところが行なった職場のパワハラに関する実態調査では、職場のパワハラ防止の取り組みに不満を抱えていると回答した人が61.2%にのぼった、とのことです。
そして、不満を持つ理由としては、
などなど、社内のハラスメント対策の実効性のなさをなげく意見が多かったそうです。
つまり、相談窓口は作ったけれども、残念ながらそれは実効性のあるハラスメント対策にはなっていない、ということのようです。
これは、結局社内でハラスメント対策を完結させることには限界があることを示しています。
その会社自らが相談窓口を設置する以上、その相談窓口と会社との間の利害関係を完全に排除することは難しい。
特に、人的なリソースに限界のある中小零細企業では、なおさらそうした傾向は否定できないでしょう。
そうしたこともあって、社内に相談窓口を設置しても、なかなかそれが信頼されないという実態があるようです。
このような場合、その組織内ですべての対策を完結することには限界があることを前提に、たとえば相談窓口を第三者に委託することも1つの方法だったりします。
最近、私が所属する法律事務所に、ある企業様からこうしたハラスメント対策の相談窓口になってほしいとの依頼があり、この企業様と顧問契約を締結して対応しています。
このように、顧問弁護士の事務所を相談窓口にするという方法もあります。
弁護士は法律上守秘義務を負っていますので、相談したことを外にもらされる心配がない、という信用はあると思います。
いずれにしても、企業のハラスメント対策として、実効性のある相談体制の整備が今求められている、ということですね。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
会社としても、せっかく相談窓口を設けているにもかかわらず、SNSでいきなり外部にハラスメント被害の事実を暴露されては、ダメージも大きいでしょう。
社員に信頼される相談窓口の設置や相談体制の整備、これらが今後ますます必要になってくるものと思われます。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。