社長(取締役)というのは、
会社から経営を任されている立場です。
ところが、
中小零細企業では、
社長=オーナーという会社が多く、
社長による会社の「私物化」や「公私混同」
をやってしまいがちです。
今日は、
そんな社長による会社の「私物化」
のリスクについてお話しします。
(今日の「棒人間」 会社の私物化はダメ?)
<毎日更新680日目>
京都市の観光地の嵐山で、
鵜飼(うかい)見物船を運行する
「嵐山通船」という会社で、
経費を私的に流用したとして、
前社長に対して賠償命令が出た、
との報道がありました。
報道によると、
前社長が社長を務めていた時代に、
会社から建築に関わる費用の
「立替金」名目で約600万円、
鵜飼の専門家への「研究費」
名目で約270万円、
「交際費」の名目で約220万円
などが支出されたとのことです。
その後、
前社長が退任後に、
会社がこれらの費用は前社長が
私的に流用したものとして、
前社長に対して損害賠償請求の
裁判を起こしました。
判決では、
帳簿で支出先が特定
されていなかったり、
支払い先が金銭の
受領を否定したり
したことなどから、
これらの費用は大半が
業務での支出とは
認められないとされました。
そして、
前社長に対して、
約1000万円近い賠償金を会社に
支払うように命じたとのことです。
社長というのは、
会社の「取締役」
としての立場にあります。
取締役は、
会社との間で委任契約を結んでおり、
この委任契約上の義務として、
職務を行わなければ
ならないという
義務を負っています。
さらに、
会社法という法律でも、
取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のために忠実にその職務を行わなければならない
と規定されています。
社長が会社の経費を
私的に流用することは、
取締役としてのこれらの
義務に違反して、
会社に損害を与える
行為に他なりません。
そこで、
その場合には、
取締役は、
会社に対して損害を
賠償しなければならない、
ということになります。
これは、
株式会社の所有者は
あくまで「株主」であり、
「取締役」はいわばその
「株主」から会社の経営を
任されている立場である
ことに基づくものです。
取締役が、
会社を私物化してしまうことは、
いわば会社の所有者である
株主の利益を害する行為
になるわけです。
ただ、
多くの中小零細企業の場合は、
社長自身が「取締役」
であるとともに、
「株主」(オーナー)の地位を
兼ねていることがほとんどです。
そのような会社であれば、
別に「私物化」とかうるさいことを
言わなくても良いではないか?
そのように思われるかも
知れません。
しかし、
中小零細企業においても、
社長による会社の「私物化」や
「公私混同」は大きな
リスクがあります。
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中小零細企業の社長が、
公私混同してしまう典型的な
パターンとしては、
たとえば
など場合があります。
しかし、
厳密には、
社長が会社のお金を使った場合は、
会計上は、
会社から社長への「貸付金」
として処理しなければ
なりません。
決算書上で、
会社から社長に対する貸付金が多い
会社というのは、
金融機関から良くは見られません。
だと思われて、
融資を断られるケースも
あり得ます。
また、
税務上も、
社長のプライベートの
飲食費などは、
経費とは認められません。
税務調査が入れば、
そのような経費は否認されて、
延滞税などの支払いを
余儀なくされます。
また、
そのようなプライベートな支出は、
社長の給料だということになり、
そうなると、
その分は社長個人の所得税が
課税されることになります。
さらに、
社長が会社のお金を「公私混同」
している会社というのは、
たいてい業績が悪化していきます。
売上を抜いたり、
プライベート費用を経費計上する行為は、
結果的に会社の利益を減らし、
会社の業績を悪くする行為だからです。
そして、
社長が会社のお金を「公私混同」
している姿は、
実は社員から丸見えだったり
することも多い。
このような社長のもとで働く社員の
モチベーションも下がりますし、
社員の心が離れて離職率が高くなって
しまうかも知れません。
そんなわけで、
社長の「公私混同」や「会社の私物化」は、
金融機関からの評価が下がるリスク、
課税上のリスク、
そして社員の離職につながるリスクが
あります。
いくら、
中小零細企業で、
社長=オーナー(株主)
であったとしても、
やはり「公私混同」や「私物化」は
さまざまなリスクがあります。
ここは、
会社のオーナーという
株主としての立場と、
会社の経営責任者である
社長(取締役)としての
立場の違いを、
きちんとわきまえて
行動することが
大切ですね。
なお、
中小零細企業の経営者にとって、
いつでも弁護士にアドバイスを
求めることができる
「顧問弁護士サービス」は
とても便利です。
弁護士と顧問契約を結んでおけば、
こうした契約書のチェックを依頼したり、
相手方との交渉を依頼
したりすることもできます。
また、
法律相談をご希望の方は、
下記よりお申し込みください。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
オーナー社長の場合、
ついつい会社は自分のもの、
会社のお金も自分のもの、
という意識になりがちです。
しかし、
お金の管理がずさんな会社は、
経営もうまく行きません。
ここはやはり、
社長が自分自身に厳しくなって、
きちんと「けじめ」をつけることが
求められますね。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。