土地や建物を借りてビジネスをする場合に、空いているスペースに
屋外看板を設置することもあるでしょう。
しかし、通常の賃貸借契約の内容では、屋外看板などを設置するには、
事前に賃貸人の書面による承諾が必要とされていることが多いです。
そんな場合に、賃貸人の承諾なく看板を設置してしまったらどうなるのでしょうか?
(設置された屋外看板@沖縄県)
<毎日更新569日目>
先日、建設業を営んでいるある会社の社長さんより、
会社の屋外看板に関するご相談をいただきました。
(守秘義務がありますので、ご相談内容は大幅に変えています)
この会社では、大家さんから土地と建物を借りて、
そこを建設会社のオフィスとして使っています。
先日、土地の空きスペースに会社の屋外看板を設置したところ、
大家さんからクレームを言われたとのことです。
こんにちは!
ちょっと相談に乗っていただきたいのですが。
こんにちは。
今日はどうされましたか?
実は、うちが借りている土地で会社の屋外看板を設置したところ、土地の大家からクレームが来て困っているのです。
なるほど。
土地の賃貸借契約上、屋外看板の設置などについてはどんなルールになっているのですか?
はい。屋外看板の設置に関しては、「事前に賃貸人の書面による承諾を得ること」となっています。
それで、書面による承諾は得たのですか?
それが・・・、得られていないのです。
どうして大家さんの承諾を得ないで屋外看板を設置してしまったのですか?
実は、この大家とは他の件でも今までいろいろとモメごとがありまして、関係がとても悪化しているのです。
それで、今回も看板を設置するときに大家に連絡したのですが、無視されたのです。
なるほど、大家さんから無視されたとは、具体的にどんな感じですか?
はい。最初は大家にメールで打診をしたのですが、まったく返信をもらえません。
また、大家に電話をかけても出てくれませんし、直接大家さんの家にも行ってみたのですが、居留守を使われているようで会ってもらえませんでした。
なるほど、それで承諾なく設置してしまった、というわけですね。
そうなんですよ。
ところが、屋外看板を設置した途端に、大家がすごい剣幕で文句を言ってきたのです。
それで、大家さんは何と言っているのですか?
事前に承諾を得ないで勝手に屋外看板を設置するのは契約違反だから、賃貸借契約を解除すると。
すぐにうちの会社にこの土地建物から出て行ってほしいと迫られているのです。
なるほど、まぁそう言ってくるでしょうね。
本当にうちの会社は出ていかなければならないのでしょうか?
うちは長年あの場所で営業していますし、今さら急に出て行けと言われても、困ってしまいます。
確かに、事前に承諾を得ないで屋外看板を設置したことは、形式的には契約違反に当たります。
しかし、賃貸借契約の場合は、契約違反があっても、それが当事者間の信頼関係を破壊するに至るようなものでなければ、なかなか契約の解除はできません。
そして、信頼関係の破壊に至っているかどうかは、看板設置が土地の通常の利用方法の範囲を超えていないか、看板設置によって大家側に不利益があるか、事前の承諾を得ていない理由や経緯などの事情を考慮して判断されます。
としたら、うちとしてはどうしたら良いのでしょうか?
お話を伺う限りでは、契約解除が認められるような信頼関係の破壊があるとまでは考えられません。
ここはその辺も踏まえて、早急に大家さん側と協議を行うべきだと思いますね。
ビジネスで土地や建物を借りているという場合、もし借りた土地に空いている
スペースがあれば、それを有効活用して、たとえば会社の屋外広告などを設置したいと
考えるのはごく自然のことと思います。
他方で、土地や建物の賃貸借契約で、屋外に看板を設置する場合には、
とされていることが多いです。
このような場合は、当然に契約を守って、屋外看板を設置する場合には、
事前に大家さんから書面による承諾書をとっておかなければなりません。
しかし、冒頭の会社の事例のように、大家さんとの関係が悪化しているような場合には、
承諾を得ようとしても大家さんから無視されたり、特に何の問題もないにもかかわらず、
大家さんが承諾をしてくれない、というケースもあります。
このような場合に、借主が事前の承諾を得ないで屋外看板を設置してしまった場合、
契約違反ということで、大家さんから賃貸借契約を解除されてしまうのでしょうか?
この点、不動産の賃貸借契約の場合は、借主の側に契約違反があったとしても、
当事者間の信頼関係の破壊に至っていないとされるような特別の事情がある場合には、
契約解除はできないとされています。
そして、屋外看板の設置が、信頼関係を破壊するかどうかは、
などの事情を考慮して判断されます。
そこで、冒頭の会社の事例ですが、この会社では、もともと建設会社のオフィスとして
利用する目的で土地建物を借りているのですから、借りている土地の空いているスペースに
屋外看板を設置する行為は、土地の相当な利用方法であると言えるでしょう。
また、通常は、屋外看板を設置することで、特にそれが貸主に不利益を及ぼすということもないでしょう。
(ただし、看板の大きさや構造、その内容にもよる部分もありますが)
そして、借主としては、事前の承諾を得るべく何度も大家さんに連絡をしているにもかかわらず、
大家さんがそれを無視しているという状況なので、借主は事前の承諾を得たくても得られなかった、
という事情があります。
こうした事情のもとでは、未だ信頼関係を破壊するに至っていない特別な事情があるものと
判断されるでしょう。
ただ1つ、この事例で重要なことは、
という事情は、借主の側で証明しなければならないということです。
ですから、借主としては、たとえば内容証明郵便の形で大家さんに承諾を求める手紙を送る、
大家さんに対して送ったメールを保存しておくなどの方法で、証拠をきちんと残しておくことが大切です。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
ただし、冒頭の相談事例では、大家さんとの関係が日頃から悪い、ということですから、
大家さんとしてはここぞとばかりに土地建物の明渡を強硬に求めてくることが考えられます。
こうしたケースでは、早めに専門家に相談した上で、大家さんとの協議を早急に行った方が良いでしょうね!
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。