不動産売買の実務では、
正式に契約書に調印する前に、
買付証明書や売渡証明書が
交付されることがあります。
この買付証明書や、
売渡証明書が交付
されたことをもって、
正式に不動産売買の
契約が成立した、
と誤解している
人がいるので、
注意が必要です。
(今日の「棒人間」 慌てて土地を買う??)
<毎日更新996日目>
不動産業を営むA社は、
自社が持つ物件(土地建物)
の買い手を探すべく、
広告を出していました。
その広告を見た
あるお客さんが、
A社にこの物件を
購入したいという
連絡を入れました。
その後、
このお客さんから、
A社に対して
「買付証明書」が提出され、
売主であるA社もそれに対して
「売渡承諾書」をお客さんに
交付しました。
ところが、
その後この物件の代金を
めぐって交渉が難航し、
結局話がまとまらず、
売買は成立しませんでした。
しかし、
このお客さんから、
うちは買付証明書を出しているし、オタクも売渡証明書を出しているじゃないか!
だからもう契約は成立しているはずだから、話を進めてほしい。
どうしても物件を売らないなら、契約違反で訴えてやる!
などと言われているそうです。
実務上、
不動産の売買において、
買付証明書や売渡承諾書
といった書面が交付
されることがあります。
これらの書面には、
一般的に
などが記載されます。
その上で、
買付証明書では、
売渡証明書では、
といった文言が記載される
ことが多いのです。
そこで、
当事者がこうした買付証明書や
売渡証明書のやり取りを
していれば、
すでに不動産の売買契約が
成立していた、
と言えるのでしょうか?
もしこの時点で契約が
成立していれば、
その後は売主が自分の都合で
やっぱり売らないとか、
同じく買主が自分の都合で
やっぱり買わないなどと
言えなくなるわけです。
この点、
民法の原則では、
一定の例外を除き、
契約というのは、
特に契約書などの
書面の作成がなくても、
口頭でも成立する
こととされています。
しかし、
スーパーやコンビニ
での買い物とは違い、
不動産は一般に高額ですし、
いわば非日常的な取引ですから、
契約書が作成されるのが
一般です。
そして、
不動産の場合は、
正式な売買契約の成立に
至るまでの過程で、
契約書以外にも
さまざまな書面が
作成されることが
多いのです。
そうした書面の1つが、
上記の買付証明書や
売渡証明書というわけです。
この点、
買付証明書や売渡証明書は、
あくまで当事者の一方が
取引条件を提示する方法として、
相手方に交付する書面
であるとされています。
すなわち、
これらの書面は、
あくまで取引のきっかけ
となるものに過ぎず、
買付証明書や売渡証明書が
交付された時点で、
取引条件のすべてが
確定しているわけでは
ありません。
むしろ、
これらの書面に記載された
取引条件をベースに
契約交渉が行われることが
前提とされています。
ですから、
買付証明書や売渡証明書が
交付されたことをもって、
売買契約が成立したとは
認められないのが一般的です。
そんなわけで、
買付証明書・売渡証明書の
やり取りがなされただけでは、
不動産の売買契約が
成立したとは認められません。
ですから、
冒頭のA社のお客さんの、
買付証明書と売渡証明書のやりとりがなされたんだから、もう契約は成立しているはずだ
という主張は法的には通らない、
という結論になるわけです。
ところが、
実際には、
上記のとおりこれらの書面には、
といった文言が
記載されることが
多いのです。
そこで、
買付証明書・売渡証明書
の交付をもって、
売買契約が成立したと
誤解されることも多く、
紛争になるケースがあります。
最悪の場合は、
上記のA社のケースなどで、
不動産会社が
顧客から訴えられて、
「裁判沙汰」に
巻き込まれるおそれも
あります。
この点、
私のミッションは、
ということ。
「裁判沙汰」を避けるためには、
まず、不動産業者として、
買付証明書及び売渡証明書
の交付をもって、
すでに契約が成立したと
誤解する顧客が世の中には
少なくないということを
きちんと認識することです。
その上で、
これらの書面の作成段階では、
まだ正式に契約は成立していないこと、
その後の条件交渉などが
折り合わなければ、
契約成立にいたらない
可能性があることを、
顧客にきちんと説明
することです。
ただ、
こうした正式な契約締結に
至る前の段階で、
一方の当事者が、
将来契約が締結される
と信頼して、
いろいろと準備行為を
行うことがあります。
その場合、
結局その後契約が
成立しなかったとすると、
そうした準備行為が
無駄になってしまい、
場合によっては損害を被る
ケースも出てきます。
このような場合は、
どう考えたら
よいのでしょうか?
この辺は、
長くなりましたので、
また明日お話しします。
それでは、
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。