
会社が社員の副業を禁止することはできるか?
禁止は無理としても
社員が会社の許可を受けずに
勝手に副業を行った場合に
その社員に「戒告」の
懲戒処分ができるか。
今回はこの辺りを深掘り
してみたいと思います。
(今日の「棒人間」 無許可の副業が会社にバレた??)
<毎日更新1542日目>
岡山県で公立中学校の男性教諭が
無許可でコンビニエンスストアの
アルバイトをしていたということで
戒告の懲戒処分を受けた
との報道がありました。
岡山の60代再任用教諭「収入補完に」コンビニ勤務 市教委が戒告処分
報道によると
この男性教諭は
2023年11月から今月までの間に
土日など勤務時間外に合計で189日間
岡山県倉敷市内の
コンビニエンスストアで勤務し
多い月で約13万円
総額約170万円のアルバイト収入を
得ていたということです。
この教諭は60代で再任用されており
「生活の事情で収入の補完が目的だった」
と話しているそうです。
今月4日に
この男性教諭がコンビニでアルバイトを
しているという目撃情報があり
学校の校長がお店を訪れて
本人が勤務していることが
発覚したそうです。
このケースは公立中学校の教諭なので
公務員ということになります。
公務員というのは
職務専念義務の観点から
法律で副業や兼業が禁止されています。
この点
民間企業でも同じように会社が社員の
副業を禁止することはできるのでしょうか。
副業というのは
一般的には業務時間以外の
自由時間に社員が行うものです。
とはいえ
経営者としては
勤務時間以外の自由時間というのは
社員にきちんと休養して次の勤務に
備えてほしいと考えますよね。
つまり
社員の休息時間の過ごし方というものも
その社員の業務のパフォーマンスに
影響してきます。
例えば
少し極端な例ですが
社員が勤務時間終了後にコンビニで
夜通し夜勤のアルバイト
をしたとしましょう。
翌朝寝ないで出勤し
会社の勤務時間中に居眠りを
していたとしたらどうでしょうか。
このように
社員の副業によって会社の業務に
支障が出てしまうという場合も
考えられます。
あるいは
社員が会社の業務と全く同じ
仕事を副業として行うと
一種の「競業取引」となり
会社の利益が害される
という場合もあり得ます。
そこで
会社としては
当然に社員の自由な時間についても
ある程度の関心を持たざるを
得なくなります。
そして
いっそのこと社員の副業は全面的に
禁止してしまいたいという考えも
出てくるわけです。
しかしながら
民間企業の社員の場合は
勤務時間以外の時間は
原則として自由時間であり
その時間をどのように過ごすかは
その社員の自由です。
したがって
会社の就業規則などで
社員の副業を一切禁止することは
できないとされています。
とはいえ
上記のように社員の副業の種類や
やり方によっては
会社の秩序を害したり
会社の信用が傷つけられる
場合があり得ます。
そこで裁判例では
社員の副業について会社の許可制とする
ことは許されるとされています。
具体的には
その副業が
会社での労務提供に与える支障や
企業秩序に与える影響などを考慮して
会社が許可するかどうかを決定する
ことは許されるとされています。
そこで
次に問題となるのは
会社で副業を許可制としていたのに
社員が許可を取らずに勝手に
副業をしていた場合。
このような場合に
その社員に対して懲戒処分として
「戒告」の処分を下すことが
できるかということです。
この点
社員に対して懲戒処分を科すためには
あらかじめ就業規則によって懲戒の種類や
どのような行為が懲戒処分の対象
となるのかといったことを規定しておく
必要があります。
ですから
こうしたケースであると
まず 就業規則において副業についての
規定をきちんと整備しておくこと。
さらに
無許可で社員が副業を行った場合の
懲戒処分についても
きちんと事前に規定しておく
ことが必要となります。
ちなみに
社員の副業が発覚した後で
就業規則の規定を整備して
その規定に基づいて社員を懲戒処分に
するということはどうでしょうか?
このように
事後的に就業規則の規定を整備して
社員に懲戒処分を科すということは
できないとされています。
ですから
あくまで事前にきちんとした
就業規則の整備が必要となります。
最近では
働き方改革の一環として
政府が社員の副業を推奨しています。
現代においては
社員の副業を推奨することで
オープンイノベーションが生まれたり
経済成長につながるという考え方が
背景にあります。
それと同時に
中小企業においても
社員の副業をめぐるトラブルが
今後も増えると考えられます。
そうしたトラブルを予防するためにも
やはり就業規則をきちんと整備
しておくことは重要かと思います。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
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中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。