銀行振込の手数料を
差し引いいて代金を支払う
なんてことをやっていませんか?
しかし
これは「取適法」という法律に
違反する可能性があります。
「取適法」の新しいルールについて
昔の商売上の「慣行」に
さかのぼって考えてみました。

(今日の「棒人間」 振込手数料を差し引く??)
<毎日更新2012日目>
弁護士たる者(ってエラソーですが・・・)
常に法律知識のインプットに
努めねばなりません。
で
時々分厚い専門書を買ってきて
意気込んで読むんですが
これがひとりでは続かない・・・。
ついつい仕事だのなんだのと
言い訳して途中でサボりがちに
なってしまいます。
そこで
こんなときにありがたいのは
オンラインの読書会です。
これは
主に同業者を中心とした
有志でオンラインで集まって
みんなで分厚い専門書を
がんばって読み込もうという
私のようなナマケ者にとっては
非常にありがたい会。
複数集まっての読書会ということになると
やはり恥をかきたくないので
少しは予習しとこうか
という気分になるもんです。
そんなわけで私も
このオンライン読書会には
結構積極的に参加し
日々研さんにイソシンデイル
というわけです。
先日
このオンライン読書会で
「取適法」の勉強をしました。

取適法というのは
正式名称が「製造委託等に係る中小受託事業者
に対する代金の支払の遅延等の
防止に関する法律」という長〜い法律。
通称「中小受託取引適正化法」とか
もっと短く「取適法」と呼ばれていて
いわゆる下請法の改正法で
今年施行されたばかりの法律です。
で
このオンライン勉強会で
おもしろい話を聞きました。
それは
銀行の「振込手数料」を誰が
負担するのかという問題です。
たとえば
ある会社が別の会社に仕事を発注し
その報酬として10万円を支払うとします。
この10万円を銀行振込で支払う際に
振込手数料が440円かかるとしたら
実際に振り込む金額は
どうなるのでしょうか?
これまでの商売の世界では
振込手数料を差し引いた
9万9560円を振り込む
ということが広く行われてきました。
会社間の取引などでも
といった条項が設けられていることは
めずらしくありません。
ところが
2026年1月に施行された取適法では
対象となる取引について
振込手数料を差し引いて代金を
支払うことが禁止されました。
この法律によって
たとえ契約書に「振込手数料は受託者負担」
と書かれてあっても
原則として認められなく
なりました。
ただ
元々なぜ振込手数料を「受取人負担」とする
ような慣行が長年続いてきたのでしょうか?
昔は
今当たり前に行われている
「銀行振込」という仕組み
そのものがありませんでした。
そこで
たとえば
ある職人が注文を受けて品物を作り
発注者に納品するとします。
その場合
職人が自ら品物を持って
発注者のところに出向き
そこで代金を受け取るといった形が
オーソドックスだったようです。
そして
その際にかかる交通費や運搬賃などは
基本的に代金を受け取る側が負担していた
という話です。
つまり
お金を受け取るためにかかる費用は
受け取る側が負担するという
考え方です。
ところが
時代が進み
銀行振込が普及します。
そうすると
代金を支払う側に
新たに「振込手数料」という費用が
発生するようになりました。
ここで
発注者の立場に立ってみると
という発想になるわけです。
そこで
銀行振込になっても
その費用は代金を受け取る側に
負担してもらおう。
こうした発想で
振込手数料を「受取人負担」
とする商慣行につながった
というわけです。
仕事を発注する立場の方が
受注する立場(代金を受け取る側)
よりも強い立場に立つことが多い
ということも当然影響したのでしょう。
なるほど
当たり前になっている商売の慣行にも
それなりの歴史的な背景が
あるのかと思うと
なかなかおもしろいですね。
さて
話を現実に戻します。
実は
取適法ができる前の下請法のもとでは
発注前の書面での合意があり
実際に金融機関に支払う
振込手数料の範囲内であれば
代金から振込手数料を差し引く
ことが認められていました。
ところが
2026年1月から施行された取適法では
この部分の取り扱いが大きく変わりました。
取適法の対象となる取引では
受注者側との合意があっても
振込手数料を代金から差し引くことは
「代金減額」として禁止されているのです。
つまり
今まで適法だったことが
法律の運用ルールの変更によって
認められなくなったというわけです。
ここで注意しておきたいのが
会社で使っている「契約書」です。
中小企業の場合は
何年も前に作った契約書のひな形を
そのまま使い続けていることも
少なくありません。
その契約書に
という条項が残っていないでしょうか?
もし残っていれば
取適法の対象となる取引については
契約書の見直しとともに
実際の支払い方法も変更する
必要があります。
とか
という理屈は
もはや通用しません。
たかが数百円の振込手数料ですが
それを差し引くことが法律違反に
つながる可能性があるのです。
商売の世界には
長年続いてきたさまざまな
「慣行」があります。
しかし
昔から当たり前に行われてきたことが
今でも法律上許されるとは限りません。
時代が変われば
商売をめぐる法律のルールも
変わることがあります。
だからこそ
中小企業の経営者としては
「昔からこうしている」という常識を
ときには疑ってみることも必要でしょうね。
特に
長年使い続けている契約書や
取引条件については
定期的に見直すことが大切です。
そうした小さな見直しの積み重ねが
思わぬ法律違反や取引先との
トラブルを予防することにもつながるのです。
たかが「振込手数料」
されど「振込手数料」
ですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。