「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

【固定残業代制度にまつわる誤解】「定額働かせ放題」の制度ではありません!

LINEで送る
このエントリーを Google ブックマーク に追加
Pocket

固定残業代制度を導入すれば、

実際の残業時間に関係なく、

定額の残業代を支払えばOK

 

 

こんな風に誤解している

経営者の方が、

めずらしくありません。

 

 

しかし、

これは完全な誤解であり、

固定残業代制度はこうした

「定額働かせ放題」の制度

ではありませんので、

注意が必要です。

 

 

 

(定額飲み放題の生ビール)

 

<毎日更新714日目>

固定残業代制度が有効となるためには?

昨日から、

いわゆる「固定残業代制度」の

お話をしています。

 

 

「うちは固定残業代制度だから大丈夫」という社長に潜む重大なリスクについて

 

固定残業代制度とは、

労働基準法の割増賃金(残業代)

の代わりに、

一定額の手当(固定残業代)

を支払う、

というものです。

 

 

たとえば、

ある会社で基本給が月額20万円

であったとして、

あらかじめ会社と社員との

合意に基づいて、

1ヶ月15時間の残業を

見込んだとします。

 

 

この15時間分の割増賃金(残業代)

として、

5万円を基本給にプラスして

支払っていたような場合です。

 

 

このようなケースで、

実際の残業時間が、

約束どおり月15時間以内で

収まっている場合には、

あまり問題となることはありません。

 

 

ところが、

実際の残業時間が、

月に15時間を超えてしまった

ような場合は、

そもそもこのような固定残業代制度が

有効なのかどうか、

争いになることがあります。

 

 

 

仮に月の残業時間が

15時間を超えて,

18時間だったと

仮定しましょう。

 

 

この場合,

上記の15時間分の残業代を

あらかじめ見込んだ固定残業代制度が

有効であれば,

あくまで基本給は20万円

として考えて,

会社は残りの3時間分の残業代を

支払えば良いことになります。

 

 

ところが,

この固定残業代制度がそもそも

無効であるということになると,

基本給は20万円ではなく

25万円となってしまいます。

 

 

しかも,

その25万円を残業代計算の

基礎として,

残業時間の合計額である

18時間分の割増賃金(残業代)

を支払わなければならなく

なります。

 

 

ですから,

会社にとっては,

自社が定めたこの固定残業代制度が

法的に有効であるかどうかは

とても重要な問題になります。

 

この点、

固定残業代制度が有効

となるための要件を示した

最高裁の判例があります。

 

 

それによると、

固定残業代制度が有効

となるためには、

① 会社と労働者の間で、基本給(上記の例でいえば25万円)のうち、割増賃金に当たる部分(上記の例で15時間分の残業代5万円の部分)が明確に区別されて合意されていること

 

② 実際の残業代の額が、固定残業代の額を上回るとき(上記の例で、実際の残業時間が15時間を超えるとき)は、その差額(実際の残業時間の残業代と、あらかじめ定めた15時間分の残業代の5万円との差額)を支払うことが合意されていること

が必要だとされています。

 

 

要するに、

会社と労働者との間で,上記の20万円の基本給と明確に区分されて,あらかじめ15時間の残業時間を見込んだ残業代5万円を基本給に組み込んで支払うということが合意されていること,

 

しかも,もし実際の労働時間があらかじめ予定していた15時間を超えた場合には,その超えた部分の残業代をさらに追加して支払うということが合意されていなければならない

ということです。
 

 

 

 

 

固定残業代制度を導入する上で、注意すべきポイント

それでは、

上記を踏まえて,

固定残業代制度を採用

する会社としては,

どのような点に注意が

必要でしょうか?

 

 

この点,

固定残業代制度の中で,

割増賃金(残業代)に当たる部分

(固定残業代部分・上記の例で5万円)が,

15時間の残業代見込みの分で

あることをあらかじめ明記する

規定を設けておくことが

必要になります。

 

 

具体的には、

会社の就業規則や賃金規定で

定めておくことが必要です。

 

 

このような規定があれば,

仮に後々裁判などで問題に

なった場合でも,

上記の「明確に区分されて合意」

されていたことが相当程度証明

できることになるからです。

 

 

この場合,

就業規則の中で,

単に

「基本給の中に割増賃金(残業代)が含まれる」

などと

抽象的な規定を置くだけでは

不十分です。

 

 

具体的な金額や割合によって

基本給の中の残業代部分を明確に

区分しておくことが重要です。

 

 

また,

上記のように

,実際の残業時間が予定していた

15時間を超えた場合には,

超えた部分については追加して

残業代を支払わなければならない

ことは言うまでもありません。

 

 

この場合は,

基本給を20万円として残業代

を計算します。

 

 

このように、

実は、

固定残業代制度というのは、

法律上の要件が結構厳しいのです。

 

 

もし法的に無効だとされてしまうと、

固定残業代部分と想定した部分

(上記の5万円の部分)

も含めた金額(つまり25万円)

基本給とする必要があります。

 

 

そして、

その25万円を基準にして、

実際の残業時間分の残業代を

支払わなければならなくなって

しまいます。

 

 

ところが、

固定残業代制度を導入している

会社の社長さんは、

結構誤解している人がおられます。

 

 

あらかじめ1ヶ月の残業代は

いくらと決めておき,

実際に何時間残業しようが,

予定していた残業代しか

支払わないといったような

ケースが見られます。

 

 

このような

「定額働かせ放題」のシステムは

法的には認められませんので,

注意が必要です。

 

 

もし、

固定残業代制度を導入する場合には、

きちんと就業規則に規定を置くこと、

そして、

その場合もきちんと社員の労働時間を

把握しておくことが重要です。

 

 

 

 

 

 

まとめ

というわけで、

今日のポイントは

 

 固定残業代制度は、「定額働かせ放題」の制度ではないので注意が必要!

ということです。

 

 

そんなわけで、

「固定残業代制度」の導入を

ご検討の会社は、

ご自身で勝手に制度作るのは

危険だと言えます。

 

 

必ず専門家である弁護士に

相談してから作った方が

良いでしょう。

 

 

ちなみに、

私の提供している

顧問契約サービスの場合、

定額で決められた

「サービスを受け放題」ですので、

必要な方はご検討いただければと

思います。

 

 

顧問契約サービスについて

 

 

下記の関連動画もご覧ください!

 

 

 

 

 

 

 

 

最新動画 

今回は、有給休暇の時季変更権ということで、社員からの有給の申請を、今は忙しいからといって断ることはできるか、こんなテーマでお話しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

活動ダイジェスト

昨日は、息子の小学校の保護者会がありました。
行ってみると、ビックリしたのは、参加した保護者のほぼ9割5分がママで、パパの参加がほとんどなかったこと。
まだ、保育園の方がもうちょっとパパも参加していたな〜と。
たしかに、平日の昼間の開催ではあったのですが、ちょっとなんだかな〜と思ってしまいました。

ご提供中のメニュー

 

 

 

LINEで送る
このエントリーを Google ブックマーク に追加
Pocket

お問い合わせ

住所 150-0031
東京都渋谷区桜丘町4番23号渋谷桜丘ビル8階
マップを見る
受付時間 【平日】9:30〜18:00
【土曜日】9:30〜12:00
渋谷共同法律事務所のHP

           

裁判しないで解決する
ノーリスクプロモーター

                               
名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

カテゴリー