任期途中で死亡した
取締役に支払う退職金。
実は
これも法的に
「役員報酬」にあたります。
ですから
支給するためには
定款の定めがあるか
株主総会の決議を
経る必要があります。
(今日の「棒人間」 その支払い、大丈夫??)
<毎日更新1225日目>
先日
都内で不動産業を営む
A社長よりご相談を受けました。
実は、弊社の取締役が3年前に、任期の途中で亡くなったのです。
そうだったんですね。
それで、その亡くなった取締役の遺族に、弊社の取締役の退職金規程に基づいて、退職金が支払われたのです。
なるほど。
ところが、最近になって、弊社の株主から、当時の退職金の支払いについて、株主総会の決議を経ていないのではないか、と言われたのです。
なるほど、当時、株主総会は開かれなかったのですか?
はい、開いておりませんが、何かマズいのでしょうか?
そうですね、御社は、取締役の退職金について、退職金規程の他に、定款で定めは置いていますか?
定款には特に定めはないですね。
そうですか。実は、取締役の退職金も、法的にはいわゆる「役員報酬」にあたるので、定款に記載がない場合は、株主総会の決議を経る必要があるのです。
そうなんですか。しかし、もう3年前に支給してしまったものは、どうしたらよいのでしょう?
事後的にでも、株主総会を開いて承認を得るか、株主全員の同意が得られれば、過去に支払われた退職金も例外的に有効になる場合があります。
会社法上
取締役などの役員の報酬は
会社の定款で定めるか
株主総会の決議で決める
必要があるとされています。
実際には
定款で役員報酬について
定めることは稀ですので
多くの場合は株主総会の決議が
必要であるということになります。
すなわち
社長なり取締役会で
勝手に決めるということは
原則としてできない
ことになっています。
これは
もし取締役が役員報酬を
決定できることになると
いわば自分たちの報酬を
自分たちで決めることになります。
そうすると
不当に高額の報酬を決定してしまい
会社に損害を与える
おそれがあるからです。
(これを,「お手盛りの弊害」
などと呼ばれています)
この点
取締役の退職慰労金
すなわち退職金も
法的には「報酬」に含まれます。
ですから
やはり取締役の退職金についても
定款にその額の定めがなければ
株主総会の決議が必要となります。
なお
死亡した取締役の退職金について
「弔慰金」という名目で
支払われることがありますが
この場合も同様です。
ただし
個々の役員報酬の具体的
な金額などもすべて株主総会で
決定しなければならない
とするのは面倒ですし
現実的ではありません。
そこで
株主総会で役員報酬の
総額を定めておけば
具体的な金額の決定は
取締役会にゆだねることが
できるとされています。
以上が会社法の定めですが
仮に冒頭のA社長の会社のように
株主総会決議を経ないで
退職金を支給してしまった場合は
どうなるのでしょうか?
この点
原則として
総会決議に基づかない退職金の支給は
法的に無効だということになります。
支給が無効だということになると
支払いを受けた遺族等は
その退職金を会社に返さなければ
ならないことになります。
ただし
例外もあります。
すなわち
株主総会決議を経ないで
支払われた役員報酬であっても
その後
事後的に株主総会の決議を経れば
さかのぼって支払われた
役員報酬は適法なものである
とした裁判例があります。
これは
事後的であっても
株主総会の承認を得られるのであれば
取締役による「お手盛り」の
弊害を防止できるからです。
さらに
仮に株主総会の決議がなくても
株主全員の同意があれば
役員報酬の支払いは有効だ
とした裁判例もあります。
しかし
これらの事例は
いずれも会社内で紛争や争いが
起こっていない事案です。
もし
株主間で紛争が起こっている場合には
同意は得られませんし
事後的でも株主総会決議を
経ることは不可能となって
しまいます。
そんなわけで
これらの事例はあくまで例外です。
株主間のトラブル
「裁判沙汰」を避けるためにも
取締役に退職金を支給する際には
株主総会決議という手続きを
きちんと経る必要がある
ということは覚えて
おかれた方がよいでしょう。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。