
最近
副業をめぐるトラブルが多くなっています。
本業の会社と副業の会社で
働いた合計の労働時間が
法定の労働時間を超えてしまいました。
残業代は本業の会社と副業の会社の
どちらが支払う義務があるのでしょうか。
(今日の「棒人間」 残業代はどちらが払う??)
<毎日更新1512日目>
あの〜、残業代をください。
残業だって?だってうちで3時間しか働いてないじゃないか?
でも、実は本業と通算すると、残業代が発生するんです。
ドヒャ!!
今の時代
政府の働き方改革の一環として
社員の副業が奨励されています。
その影響からか
空前の副業ブームになっています。
会社として
社員の副業についてどう向き合うか
これは難しい問題です。
ただ法律的な原則を言いますと
会社は就業規則などで社員の副業を一切
禁止するということはできないとされています。
ただ会社が社員の副業を許可制
とすることは許されています。
この辺は以前ブログに書いたことがあります。
さてAさんは
B会社で正社員として午前9時から夕方5時まで
間に昼休み休憩1時間があって
8時間労働しました。
そして午後6時から午後9時までC会社で
契約社員として3時間勤務しました。
この場合
残業代はどうなるのでしょうか
という問題があります。
つまり
この日AさんはB会社で8時間
C会社で3時間働いていますので
合計11時間働いています。
つまり3時間分が時間外労働になっているので
法定の割増賃金を支払わなければいけない。
その場合割増賃金はB会社とC会社と
どちらが支払うんでしょうか。
この点
労働基準法では原則として
労働時間の上限として1週間で40時間
1日8時間
これが上限とに定められています。
複数の職場で働く場合でも
労働時間は通算して扱われます。
ですから
勤務先が複数でも1日8時間
週40時間の上限の規制が
変わらないとされています。
今回のケースでは
Aさんは本業8時間勤務した後に
副業で3時間勤務していますから
1日合計11時間労働しています。
ですから法定労働時間8時間を超える
3時間分の残業時間が発生します。
労働基準法の解釈では
複数の職場での労働時間の通算により
法定の労働時間を超えた場合には
それぞれの使用者が自ら労働させた
法定外労働部分について割増賃金を
支払う必要があるとされています。
今回のケースでは
B会社での本業は
労働時間はちょうど8時間という
法定内に収まっています。
超過分の3時間は副業である
C会社で働いた時間にあたりますので
残業代の支払い義務は副業先である
C会社にあるという結論になります。
なお
時間外労働を残業させるためには
いわゆる36協定の締結・届出が
必要となります。
【サブロク協定大丈夫?】「そんな法律知らなかった」は通りません!
この場合は
C会社で残業させていますので
このC会社において36協定の締結・届出が
なされていることが必要です。
しかし
C会社の立場からすると
もしAさんがB会社で働いていたという
事実を知らされなかったとしたら
どうでしょう
C会社としては
たった3時間働いただけで割増賃金
残業代を払えと言われても
ちょっと納得できないかもしれません。
実は
社員の副業が増えるにつれて
こういった副業をめぐるトラブルが
多くなるということが予想されています。
このような副業のトラブルを予防するためには
どうしたらいいんでしょうか。
まずどちらの会社でも社員の副業についての
ルールというものを就業規則できちんと
定めておく必要があります。
そして
副業を許可した場合には
例えばどこの会社で何時間副業するのか
そういったことを申告する義務
というものをきちんと定めておくことです。
また
労働時間の上限との関係で
副業時間の上限時間をきちんと
設定しておくことも必要でしょう。
今回のケースでも
例えば副業先のC会社は
もともとAさんがB会社で8時間
働いているということを知っていれば
最初から割増賃金を込みで給料を
支払うという必要性が出てきます。
C会社としてみると
自分の会社では3時間しか働いていないのに
割増賃金を支払わなければいけないというのは
理不尽に感じるかもしれません。
このようなケースでは
雇用契約ではなく
業務委託契約を用いるというのも
一つの方法ではあります。
ただ
雇用契約と業務委託契約についても
また難しい問題があります。
実質的には雇用であるにもかかわらず
形式的に業務委託契約とするような場合には
実質的には雇用契約と判断されてしまい
やはり残業代の支払い義務が発生する場合も
ありますので注意が必要です。
いずれにしても
今の時代は社員が副業を行うということも前提に
トラブルを予防するためのいろいろな
会社の体制をきちんと整備しておくことが
必要だと思います。
それでは
また。
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今回は、「社員による顧客名簿の漏洩は犯罪?不正競争防止法違反で実刑判決も??」というテーマでお話ししています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
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中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。